トラクターのエンジンが突然かからなくなった経験はありませんか?特にディーゼルエンジンの場合、燃料切れを起こすとエンジン内に空気が入り込んでしまい、エンジンの再始動が困難になることがあります。これは「エアかみ」と呼ばれる状態です。
エア抜きの方法は各メーカーによって異なりますが、基本的な手順は似ています。クボタトラクターの場合、燃料フィルター上部にある空気抜きバルブを緩め、燃料ポンプを操作することでエア抜きを行います。また、イセキトラクターでは燃料ホースの交換後にもエア抜き作業が必要になることがあります。
この記事のポイント!
- トラクターでエア抜きが必要になるケースと症状
- メーカー別のエア抜き手順と注意点
- エンジンがかからない時の基本的な対処方法
- トラブルを防ぐための日常的なメンテナンス方法
トラクターのエア抜きが必要になるケース
- 燃料切れによるエア混入の仕組み
- エンジン整備後のエア混入について
- ストレーナー清掃後の注意点
- エア混入のサインと症状
燃料切れによるエア混入の仕組み
トラクターは軽油で動くディーゼルエンジンを搭載しています。ガソリンエンジンとは異なり、ディーゼルエンジンは燃料が空になってしまうとエンジン内に空気が入り込んでしまいます。
この状態ではエンジンを始動しようとしてもかかりません。なぜなら、燃料系統に空気が入り込むと、燃料ポンプが正常に燃料を送ることができなくなるためです。
エアかみを起こすと、セルモーターは回るものの、エンジンが始動しない状態になります。この場合、必ずエア抜き作業が必要になります。
燃料切れによるエアかみは、予防が可能です。燃料タンクの残量に注意を払い、燃料切れを起こさないようにすることが重要です。
エア抜き作業は、機種によって手順が異なりますが、基本的には燃料系統の空気を抜き、新しい燃料に置き換える作業となります。
エンジン整備後のエア混入について
エンジンの整備作業を行った後も、燃料系統にエアが混入する可能性があります。これは燃料フィルターやホースの交換などの作業時に、配管内に空気が入り込むためです。
整備後のエア抜きは、作業の最後に必ず行うべき重要な工程です。特に燃料フィルターの交換後は注意が必要です。
エンジン整備後は、まず燃料系統に漏れがないことを確認します。その後、エア抜き作業を実施します。
燃料系統の整備では、必ず取扱説明書に従った手順で作業を行うことが重要です。間違った手順で作業を行うと、新たな問題を引き起こす可能性があります。
整備作業後は、エンジンの試運転を行い、正常に作動することを確認する必要があります。
ストレーナー清掃後の注意点
ストレーナーは燃料内の小さなゴミや水を濾過する重要な装置です。定期的な清掃が必要ですが、清掃後にはエア抜きが必須となります。
水は軽油より重いため、ストレーナーの底に溜まります。この水を定期的に抜くことで、エンジントラブルを防ぐことができます。
清掃作業では、ストレーナーのコックを開いて内部を燃料で満たします。クライミングポンプがある機種では、これを使用して燃料を送り込みます。
ストレーナーの清掃頻度は、使用環境や燃料の品質によって異なりますが、定期的な点検と清掃が推奨されます。
清掃後は必ずエア抜きを行い、燃料系統が正常に機能することを確認します。
エア混入のサインと症状
エア混入の主な症状は、セルモーターは回るもののエンジンが始動しない状態です。これは燃料の代わりに空気がエンジンに送られているためです。
エンジンが不調になる前に、燃料系統に問題がないか日常点検で確認することが重要です。特に燃料フィルターの状態は重要な確認ポイントとなります。
エア混入が疑われる場合は、まず燃料タンクの残量を確認します。燃料切れが原因でない場合は、燃料系統の漏れや緩みがないか点検が必要です。
深刻な症状が出る前に、予防的なメンテナンスを行うことで、多くのトラブルを防ぐことができます。
早期発見・早期対処が、エンジントラブルを最小限に抑える鍵となります。
トラクターのエア抜き手順と実践方法
- 基本的な準備と安全確認
- クボタトラクターのエア抜き手順
- ヤンマートラクターの特徴的な手順
- イセキトラクターの手順と注意点
- エア抜き作業時の重要なポイント
- エア抜き後の動作確認方法
基本的な準備と安全確認
トラクターのエア抜き作業を始める前に、まず燃料タンクを満タンにする必要があります。燃料が少ない状態では、エア抜きが正しく行えません。
夏用軽油が入っている場合は、寒冷地では凍結の可能性があるため、灯油を半分程度入れることで対応できます。これは特に冬季の作業で重要になります。
作業を始める前に、燃料フィルターの位置を確認します。フィルター上側には小さいネジか六角が付いており、これがエア抜きに使用します。
安全のため、エンジンが完全に冷えた状態で作業を行うことが推奨されます。また、作業場所は平らで安定した場所を選びます。
取扱説明書を用意し、機種特有の手順や注意点を確認してから作業に取り掛かります。
クボタトラクターのエア抜き手順
クボタトラクターでは、まずエア抜きバルブを反時計回りに回して開きます。このバルブは燃料フィルター付近にあります。
アクセルレバーを高速側に設定し、セルを回します。この時、エンジンの回転が安定するまでアクセルを開けたままにします。
エンジンの回転が高回転で安定したら、エア抜きバルブを閉めます。これでエア抜きの作業は完了です。
新しい機種では、キーを[RUN]の位置に回して1分程度待つと自動でエアが抜ける機能を搭載しています。
ただし、燃料フィルターが詰まっていないか確認し、取扱説明書に従った定期交換を行うことも重要です。
ヤンマートラクターの特徴的な手順
ヤンマートラクターのエア抜きは、取扱説明書に詳細な手順が記載されています。機種によって手順が異なるため、必ず説明書を確認します。
燃料系統を辿っていくと噴射ポンプがあり、その側面に六角のエア抜きボルトがあります。このボルトを少し緩めて燃料が出てくるのを確認します。
燃料が出ない場合は、タンクから燃料を押し出す必要があります。これには適切な長さの水道ホースを用意し、タンクの穴に合うようにビニールテープを巻いて差し込みます。
ホースから空気を送ることで燃料が押され、噴射ポンプのエア抜きから燃料が出てきます。この時点でエア抜きボルトを締めます。
最後にアクセルを全開にして始動し、回転が安定するまで待ちます。
イセキトラクターの手順と注意点
イセキトラクターでは、燃料ホースを交換した後などにエア抜きが必要になります。まず、燃料のコックが開いているか確認します。
燃料系統の配管を確認し、エア抜きネジの位置を特定します。このネジを緩めることで、空気を抜くことができます。
キーをオンの位置にして、エア抜きネジから燃料が出てくるのを待ちます。空気が混じった燃料が出始め、その後クリアな燃料が出てきます。
エンジン始動時は、ガタガタという音が出る場合がありますが、これは正常な現象です。エンジンが安定して回るまで待ちます。
作業完了後は、燃料漏れがないか念入りに確認することが重要です。
エア抜き作業時の重要なポイント
エア抜き作業では、燃料タンクを必ず満タンにすることから始めます。これにより、新しい空気の混入を防ぐことができます。
作業中はエア抜きネジやバルブを適度な強さで操作します。強すぎる力を加えると、ネジ山を潰してしまう可能性があります。
寒冷地では燃料の凍結に注意が必要です。氷点下になる地域では、適切な防寒対策や燃料添加剤の使用を検討します。
エア抜き作業中は、燃料が漏れる可能性があるため、布やウエスを用意しておくと便利です。
作業後は必ず燃料漏れがないか確認し、異常があれば直ちに対処します。
エア抜き後の動作確認方法
エア抜き後は、まずアクセルを全開にした状態でエンジンを始動します。始動後しばらくは回転が不安定になることがあります。
エンジンの回転が安定するまでは、アクセルを開けたままの状態を維持します。この間、異音や振動がないか注意深く観察します。
回転が安定したら、アイドリング状態まで徐々にアクセルを戻します。この時も異常な音や振動がないか確認します。
作業完了後は、試運転を行い、通常の作業に支障がないか確認することが推奨されます。
定期的なメンテナンスを行うことで、エア抜きが必要になるような事態を未然に防ぐことができます。
トラクターエア抜きまとめ
最後に記事のポイントをまとめます。
- ディーゼルエンジンは燃料切れでエアかみを起こす
- エア抜きは各メーカーで手順が異なる
- クボタトラクターは反時計回りにバルブを回してエア抜き
- ヤンマートラクターは噴射ポンプの六角ボルトで作業
- イセキトラクターはエア抜きネジから燃料が出るまで待つ
- 燃料タンクは満タンにしてから作業開始
- 寒冷地では燃料の凍結に注意
- エア抜き後はエンジン回転が安定するまで待つ
- アクセル全開での始動が基本
- 作業後は必ず燃料漏れを確認
- 定期的なメンテナンスで予防が可能
- 取扱説明書に従った作業手順が重要