ヤンマートラクターを使用している農家の方にとって、ロータリーの調整は作業効率と仕上がりの質を大きく左右する重要な要素です。適切な調整ができていないと、耕うん深度が不安定になったり、圃場に波ができたり、均平性が悪くなるといった問題が発生します。特に20馬力前後のトラクターでは、調整不良による問題が顕著に現れやすい傾向があります。
本記事では、ヤンマートラクターの200シリーズ(AF、EF、EG、YT)を中心に、ロータリー調整の基本から実践的なテクニックまで詳しく解説します。深耕調整の回動ダイヤル設定、均平板の加圧調整、傾き調整の具体的手順、そしてトラブル時の対処法まで、現場で即活用できる情報を網羅的にお伝えします。
この記事のポイント |
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✓ ヤンマートラクター200シリーズの深耕調整方法をマスターできる |
✓ 圃場条件に応じた最適な設定値の選び方がわかる |
✓ 均平板調整で耕うん仕上がりを劇的に改善する技術を習得できる |
✓ トラブル時の対処法と予防策を身につけられる |
ヤンマートラクターロータリー調整の基本知識と重要ポイント
- ヤンマートラクターロータリー調整が必要な理由とタイミング
- 深耕調整の基本は回動調節ダイヤルの設定
- 均平板(リヤカバー)の加圧調整で仕上がりが変わる
- ホイールゲージ調整で耕深を安定させる方法
- 自動耕深機能を活用した効率的な調整
- 200シリーズ(AF、EF、EG、YT)共通の調整ポイント
ヤンマートラクターロータリー調整が必要な理由とタイミング
ヤンマートラクターのロータリー調整は、農作業の品質と効率を決定する最も重要な要素の一つです。適切な調整を行わないと、耕うん深度が不安定になり、作物の生育に悪影響を与える可能性があります。
ロータリー調整が必要になる主なタイミングは、季節の変わり目、圃場条件の変化、作業機の交換時などです。特に春耕うんから夏の中耕作業に移る際や、乾燥した圃場から湿潤な圃場に移る際には、細かな調整が必要になります。
🔧 調整が必要な症状チェックリスト
症状 | 原因 | 対処法 |
---|---|---|
耕うん深度が浅すぎる | 回動調節の設定不足 | ダイヤルを5-6に調整 |
圃場に波ができる | 均平板の圧力不足 | バネ調整位置を変更 |
左右の耕深が異なる | 傾き調整不良 | チェックチェーンで左右バランス調整 |
土の跳ね上がりが激しい | 作業速度とPTO回転の不適合 | 速度を1-3km/hに調整 |
調整作業を行う際は、必ず水平な場所でトラクターを停止させて作業することが重要です。傾斜地での調整は正確性を欠くため、可能な限り平坦な場所を選んで実施してください。
また、ヤンマーの200シリーズでは、AF200、EF200、EG200、YT200のすべてのモデルで基本的な調整方法が共通しているため、一度習得すれば他のモデルでも応用が可能です。これらのシリーズに搭載されているロータリーは、R、ER、RB、EB200シリーズで、100シリーズとも操作方法がほぼ同じです。
深耕調整の基本は回動調節ダイヤルの設定
深耕調整の最も重要なポイントは、ロータリー中央より右側にある回動調節ダイヤルの適切な設定です。多くの農家が見落としがちなこの調整により、耕うん深度を精密にコントロールできます。
回動調節ダイヤルには数字が刻まれており、数字が大きくなるほど浅い耕うんが可能になります。一般的な設定として、普通耕うんでは3-4、春耕うんでは5-6の設定が推奨されています。
📊 ヤンマーロータリー回動調節設定表
作業内容 | 推奨設定値 | 耕うん深度 | 適用場面 |
---|---|---|---|
深耕作業 | 1-2 | 25-30cm | 秋起こし、心土破砕後 |
普通耕うん | 3-4 | 20-25cm | 一般的な春作業 |
浅耕作業 | 5-6 | 15-20cm | 春耕うん、表層処理 |
表面処理 | 7-8 | 10-15cm | 除草、軽耕 |
実際の調整作業では、目盛り5に設定すると20センチ以下で安定した耕うんが可能になります。この設定により、リヤカバーの地面への接地が早くなり、自動深耕の感度も向上します。
回動調節の効果を確認するには、平らな場所でロータリーを地面に降ろし、設定を変更して地面とリヤカバーの隙間を観察することが有効です。目盛りが大きくなるほど隙間が少なくなり、実際の耕うん中もセンサー反応が早くなります。
この調整は特に浅い耕うんを行う際に威力を発揮します。従来の昇降レバー近くのダイヤルだけでは十分な浅耕ができない場合でも、回動調節を併用することで理想的な深度を実現できます。
均平板(リヤカバー)の加圧調整で仕上がりが変わる
均平板の加圧調整は、耕うん後の圃場の仕上がり状態を大きく左右する重要な要素です。この調整により、土塊の砕土性、表面の平滑性、そして作業後の沈下量をコントロールできます。
均平板の調整は主にバネの位置変更によって行います。バネの取り付け位置を変えることで、均平板が地面に加える圧力を段階的に調整できます。圧力が適切でないと、耕うん後に大きな土塊が残ったり、逆に過度に細かくなりすぎて土壌構造を破壊したりする可能性があります。
🌱 均平板調整による効果の違い
圧力設定 | 仕上がり状態 | 適用条件 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
強圧力 | 細かい砕土 | 粘土質、塊状土 | 均平性良好 | 過度な微細化リスク |
中圧力 | バランス良好 | 一般的な圃場 | 標準的仕上がり | 条件によっては不十分 |
弱圧力 | 粗い仕上がり | 砂質土、乾燥条件 | 土壌構造保持 | 大きな土塊残存 |
均平板の調整作業を行う際は、圃場の土質と水分条件を十分に考慮することが重要です。粘土質の圃場では強めの圧力設定が効果的ですが、砂質土では過度な圧力は土壌の締固めを招く可能性があります。
また、作業速度との関係も重要な要素です。高速作業時には均平板の効果が相対的に小さくなるため、圧力を強めに設定する必要があります。逆に低速作業では適度な圧力でも十分な効果が得られます。
実際の調整では、数回の試し耕うんを行いながら最適な設定を見つけることが推奨されます。一度最適な設定を見つけたら、その圃場条件での基準値として記録しておくと、次回からの作業がスムーズになります。
ホイールゲージ調整で耕深を安定させる方法
ホイールゲージは耕うん深度を物理的に制限する重要な装置で、適切な調整により一定の深度での安定した作業が可能になります。左右2つのホイールは必ず同じ高さに設定することが基本です。
ホイールゲージの調整原理は単純で、ホイールを上げると深く、下げると浅くなります。しかし、この簡単な調整が耕うん品質に与える影響は非常に大きく、特に不整地や軟弱地盤での作業において威力を発揮します。
⚙️ ホイールゲージ調整の基本手順
- 水平地での基準設定: トラクターを水平な場所に停車
- 左右同期調整: 両側のホイールを同じ高さに設定
- 試し耕うん実施: 短距離での動作確認
- 微調整: 実際の耕深を測定して調整
- 記録保存: 設定値を記録して次回作業に活用
🔍 ホイールゲージ設定値の目安
目標耕深 | ホイール位置 | 適用作業 | 注意点 |
---|---|---|---|
10-15cm | 最下位置 | 浅耕、除草 | 硬盤層を避ける |
15-20cm | 中間位置 | 春耕うん | 標準的な設定 |
20-25cm | 上位置 | 深耕作業 | 土壌条件を確認 |
25cm以上 | 最上位置 | 心土破砕後 | 作業機負荷に注意 |
ホイールゲージ調整の際は、圃場の表面状態も考慮する必要があります。凹凸の激しい圃場では、ホイールが沈み込むことで実際の耕深が変化するため、設定値を若干浅めにすることが推奨されます。
また、作業機の磨耗状況もホイールゲージの効果に影響します。爪の磨耗が進んでいる場合は、同じホイール設定でも実際の耕深が浅くなる傾向があるため、定期的な点検と調整が必要です。
自動耕深機能を活用した効率的な調整
自動耕深機能は、ヤンマートラクターの優れた技術の一つで、適切に活用することで作業効率と仕上がり品質を大幅に向上させることができます。この機能を使いこなすことが、プロレベルの耕うん作業への第一歩です。
自動耕深機能を使用する際の基本操作は、油圧レバーを最下位置に設定し、専用ダイヤルで深度を調整することです。この設定により、圃場の起伏に関係なく一定の深度を維持できます。
📋 自動耕深機能の設定手順
ステップ | 操作内容 | 確認ポイント | 注意事項 |
---|---|---|---|
1 | 油圧レバーを最下位置に設定 | レバー位置の確認 | 完全に下まで押し下げる |
2 | 深度調整ダイヤルを設定 | 目標深度に合わせる | 圃場条件を考慮 |
3 | 試し耕うんで動作確認 | センサーの反応確認 | 数メートル走行して確認 |
4 | 微調整実施 | 実際の耕深測定 | スケールで正確に測定 |
5 | 本格作業開始 | 継続的な監視 | 定期的な深度チェック |
自動耕深機能の効果を最大限に発揮するには、センサーの感度調整も重要です。湿潤な圃場では感度を高めに、乾燥した硬い圃場では感度を低めに設定することで、より安定した制御が可能になります。
この機能を使用する際の注意点として、急激な地形変化への対応限界があります。極端な起伏がある圃場では、自動制御の応答速度が追いつかない場合があるため、手動での補正が必要になることもあります。
また、PTO回転数と作業速度のバランスも自動耕深の性能に大きく影響します。推奨されるPTO回転数2500回転、作業速度1-3km/hの範囲内で使用することで、最適な制御性能が得られます。
200シリーズ(AF、EF、EG、YT)共通の調整ポイント
ヤンマー200シリーズは長年にわたって改良を重ねながらも、基本的な調整方法の一貫性を保っているため、一度習得した技術を長期間活用できます。AF200、EF200、EG200、YT200のすべてのモデルで共通する調整ポイントを理解することで、効率的なメンテナンスが可能です。
これらのシリーズに搭載されるロータリーは、R、ER、RB、EB200シリーズで、基本的な機能と操作方法が統一されています。100シリーズとも操作が類似しているため、幅広いモデルに対応できます。
🔧 200シリーズ共通調整項目一覧
調整項目 | 操作場所 | 調整範囲 | 効果 |
---|---|---|---|
深耕調節 | 昇降レバー近くのダイヤル | 段階調整 | 基本的な深度設定 |
回動調節 | ロータリー右側ハンドル | 1-8段階 | 精密な深度調整 |
均平板調整 | バネ取り付け位置 | 3-5段階 | 仕上がり品質調整 |
ホイールゲージ | 左右ホイール高さ | 無段階 | 物理的深度制限 |
共通する重要な調整原則として、すべての200シリーズで「回動調節の数字を上げれば浅い耕うんが可能」という基本ルールが適用されます。この一貫性により、異なるモデル間での作業移行もスムーズに行えます。
また、エンジン回転数2500回転、PTO1速、作業速度1-3km/hという基本設定も全シリーズで共通しており、これらの設定を基準にして各種調整を行うことで、最適な作業状態を実現できます。
特に注意すべき点として、湿田での作業時の設定変更があります。すべての200シリーズにおいて、湿潤な圃場では倍速ターンやAD倍速ターンの使用を控え、基本的な4WD機能とオートアップ機能のみで作業することが推奨されています。
定期的なメンテナンスにおいても、グリスアップポイントや調整箇所が共通しているため、効率的な整備スケジュールを組むことができます。これにより、複数台のトラクターを運用している農家でも、統一された手順でメンテナンスを実施できます。
ヤンマートラクターロータリー調整の実践テクニックと応用
- 傾き調整はロアリンクとPTO軸の中心合わせから始める
- チェックチェーンの調整で左右バランスを整える方法
- 機械に水平状態を記憶させる設定手順
- 圃場条件に応じた調整値の変更テクニック
- 春耕うんと通常耕うんで異なる設定値
- トラブル時の対処法と点検ポイント
- まとめ:ヤンマートラクターロータリー調整
傾き調整はロアリンクとPTO軸の中心合わせから始める
ヤンマートラクターの傾き調整において最も重要な基礎作業は、ロアリンクの水平化とPTO軸の中心合わせです。この作業が正確に行われていないと、その後のすべての調整が無意味になってしまう可能性があります。
傾き調整作業は必ず水平な場所で実施することが前提条件です。わずかな傾斜でも調整精度に大きな影響を与えるため、可能な限り平坦で安定した場所を選択してください。作業開始前には、トラクターのタイヤ空気圧も適正値に調整しておくことが重要です。
🎯 ロアリンク水平化の手順
手順 | 作業内容 | 確認項目 | 所要時間 |
---|---|---|---|
1 | トラクター水平位置決め | 前後左右の水平確認 | 5分 |
2 | エンジン始動・暖機 | 油温の安定確認 | 3分 |
3 | ロアリンク操作 | 水平位置への調整 | 2分 |
4 | PTO軸中心合わせ | 作業機との位置確認 | 5分 |
5 | 最終確認 | 全体バランスチェック | 3分 |
PTO軸と作業機の中心合わせは、動力伝達の効率と機械の耐久性に直接影響する重要な作業です。中心がずれていると、振動の増加、軸受けの早期摩耗、そして最悪の場合は軸の破損につながる可能性があります。
中心合わせの精度を確認するには、PTO軸のスプライン部分の摩耗状況を観察することが有効です。均等に摩耗している場合は適切な中心が保たれていますが、偏摩耗が見られる場合は調整が必要です。
また、ロアリンクの左右高さ差も重要な確認項目です。わずかな差でも作業機の傾きに影響するため、精密な水準器を使用して確認することを推奨します。多くの場合、2-3mm以内の誤差であれば許容範囲とされています。
この基礎調整を正確に行うことで、その後の細かな調整作業がスムーズに進み、最終的な作業品質の向上につながります。基礎をおろそかにしては、どれだけ精密な調整を行っても良い結果は得られません。
チェックチェーンの調整で左右バランスを整える方法
チェックチェーンの調整は、ロータリーの左右バランスを確保するための重要な作業で、適切に行うことで均等な耕うん深度と仕上がり品質を実現できます。この調整を怠ると、片側だけが深く耕されたり、作業機に不要な負荷がかかったりする問題が発生します。
チェックチェーンの調整作業では、左右のチェーンに遊びがないよう手で締めることが基本です。過度に締めすぎると作業機の動きが制限され、逆に緩すぎると制御が効かなくなります。適切な張力は、チェーンを軽く押した際に1-2cm程度のたわみがある状態です。
⚖️ チェックチェーン調整の基準値
調整項目 | 基準値 | 許容範囲 | 確認方法 |
---|---|---|---|
チェーン張力 | 手締め+α | ±0.5回転 | 手動確認 |
左右差 | 0mm | ±2mm以内 | 測定器使用 |
取り付け角度 | 水平 | ±5度以内 | 角度計確認 |
磨耗限界 | 規定値 | メーカー基準 | 定期点検 |
調整作業を行う際は、エンジンを停止し、PTO軸も完全に停止していることを確認してから作業を開始してください。安全性の確保が最優先です。また、チェーンの取り付け部分にグリスアップも忘れずに実施することで、スムーズな動作と耐久性の向上が期待できます。
左右のバランス確認方法として、実際に短距離の試し耕うんを行い、耕うん深度を複数点で測定することが有効です。左右で3cm以上の差が生じている場合は、チェーンの調整不良が原因の可能性が高いため、再調整が必要です。
チェックチェーンの調整は定期的なメンテナンス項目でもあります。使用時間50時間ごと、または月1回程度の点検を行い、必要に応じて調整することで、常に最適な状態を維持できます。
また、圃場条件による調整の変更も考慮すべき点です。軟弱地盤では若干緩めに、硬い圃場では若干きつめに調整することで、それぞれの条件に最適化された作業が可能になります。
機械に水平状態を記憶させる設定手順
ヤンマートラクターの先進的な機能の一つが、機械に水平状態を記憶させる自動調整システムです。この機能を正しく設定することで、毎回の調整作業を大幅に簡素化でき、一定品質の作業を継続して実現できます。
記憶設定の手順は、傾きスイッチと作業切り替えボタンを同時操作することから始まります。この操作により、現在の機械の状態を基準位置として記録し、以後の作業で自動的にその状態を再現できるようになります。
🖥️ 記憶設定の操作手順
ステップ | 操作内容 | 表示確認 | 注意点 |
---|---|---|---|
1 | 傾きスイッチ右上げ押下 | スイッチ点灯確認 | 同時操作準備 |
2 | 作業切り替えボタン押下 | ボタン反応確認 | 確実な押下 |
3 | キースイッチON | エンジン始動確認 | 同時操作実行 |
4 | 傾きランプ点灯確認 | 赤色点灯確認 | 設定モード確認 |
5 | 深耕ランプ点灯確認 | 緑色点灯確認 | 正常動作確認 |
6 | OKボタン押下 | 設定完了確認 | 記憶完了 |
設定完了後は、傾きランプと深耕ランプの両方が点灯することで、正常に記憶されたことが確認できます。この状態になったら、OKボタンを押して设定を確定させます。
記憶された設定の精度は非常に高く、一度正確に設定すれば長期間にわたって安定した作業が可能です。ただし、作業機の交換や大幅な調整を行った場合は、再設定が必要になります。
記憶機能を活用する際の重要なポイントとして、設定時の圃場条件を記録しておくことが挙げられます。乾燥状態で設定した場合と湿潤状態で設定した場合では、実際の作業時に微調整が必要になる場合があります。
また、定期的な再設定も推奨されます。使用時間100時間ごと、または年1回程度の頻度で、設定の見直しと必要に応じた再設定を行うことで、常に最適な状態を維持できます。
圃場条件に応じた調整値の変更テクニック
圃場の土質、水分状態、前作の状況などに応じて調整値を変更することは、プロレベルの作業を実現するための重要なスキルです。画一的な設定では、すべての圃場で最適な結果を得ることは困難です。
土質による調整の基本として、粘土質の圃場では深めの耕うんと強い均平板圧力、砂質土では浅めの耕うんと適度な圧力が効果的です。これは土壌の物理的特性の違いに基づく調整です。
🌾 圃場条件別調整一覧表
圃場条件 | 回動調節 | 均平板圧力 | 作業速度 | 特記事項 |
---|---|---|---|---|
粘土質・湿潤 | 3-4 | 強 | 1.5-2.0km/h | 土塊砕土重視 |
粘土質・乾燥 | 4-5 | 中 | 2.0-2.5km/h | 硬盤対策必要 |
砂質土・湿潤 | 5-6 | 弱 | 2.0-3.0km/h | 締固め防止 |
砂質土・乾燥 | 6-7 | 中 | 2.5-3.0km/h | 飛散防止 |
有機物多 | 4-5 | 強 | 1.5-2.0km/h | 残渣処理重視 |
水分条件による調整も重要な要素です。湿潤な圃場では、土の付着を防ぐため作業速度を若干上げ、均平板の圧力を強めに設定します。逆に乾燥した圃場では、土埃の発生を抑えるため作業速度を下げ、適度な圧力で作業します。
前作の影響も考慮すべき点です。稲作後の圃場では稲株の処理が必要なため、深めの耕うんと強い砕土力が必要です。一方、野菜作後の圃場では、残根の処理と土壌構造の保持のバランスを取る必要があります。
実際の調整作業では、圃場の一角で試し耕うんを行い、その結果を確認してから本格的な作業に移ることが重要です。この試し耕うんにより、理論値と実際の条件のギャップを確認し、必要に応じて微調整を行います。
季節による調整の変更も重要です。春の耕うんでは種床造成を重視した細かな砕土が必要ですが、秋の粗起こしでは粗い仕上がりで土壌の団粒構造を保持することが重要です。
春耕うんと通常耕うんで異なる設定値
春耕うんと通常耕うんでは、目的と要求される仕上がりが大きく異なるため、それぞれに最適化された設定値を使用することが重要です。ヤンマーのロータリーでは、これらの違いを明確に意識した調整指針が示されています。
春耕うんでは種床造成が主目的となるため、細かな砕土と均平性が重視されます。一方、通常耕うんでは土壌の物理性改善と有機物の鋤込みが主な目的となり、ある程度の粗さも許容されます。
🌸 春耕うんと通常耕うん設定比較表
項目 | 春耕うん | 通常耕うん | 差異の理由 |
---|---|---|---|
回動調節 | 5-6 | 3-4 | 浅耕vs深耕 |
耕うん深度 | 15-20cm | 20-25cm | 種床vs土壌改良 |
作業速度 | 1.5-2.5km/h | 2.0-3.0km/h | 精度vs効率 |
均平板圧力 | 強 | 中-強 | 砕土vs鋤込み |
PTO回転 | 2400-2500rpm | 2500rpm | 負荷軽減vs標準 |
春耕うんの特徴的な設定として、回動調節を5-6に設定することで、浅めで安定した耕うんが可能になります。この設定により、リヤカバーの地面への接地が早くなり、自動深耕の感度も向上するため、精密な種床造成が実現できます。
春耕うんでは作業の丁寧さも重要です。やや遅めの作業速度で、確実に土塊を砕きながら進むことで、播種後の発芽率向上につながります。特に、小粒種子の作物では、細かな種床造成が収量に直接影響します。
通常耕うんでの重点は、有機物の完全な鋤込みと土壌深部の物理性改善です。このため、深めの耕うんと適度な作業速度で、効率的に土壌改良を進めます。
実際の作業では、圃場の状況に応じた柔軟な対応も必要です。春先でも土壌が硬い場合は通常耕うんに近い設定を、逆に秋でも細かな仕上がりが必要な場合は春耕うん設定を適用するなど、目的に応じた調整を行います。
年間を通じた調整スケジュールを立てることで、効率的な圃場管理が可能になります。春先の種床造成、夏の中耕除草、秋の粗起こしなど、それぞれの時期に最適化された設定を準備しておくことが重要です。
トラブル時の対処法と点検ポイント
ヤンマートラクターロータリー使用中に発生する可能性のあるトラブルとその対処法を理解しておくことは、作業の継続性と機械の保護において極めて重要です。適切な対処により、大きな故障を未然に防ぎ、修理費用を大幅に削減できます。
最も一般的なトラブルは耕うん深度の不安定です。この問題は多くの場合、調整不良や磨耗部品の交換時期が原因となっています。症状が現れた際は、段階的な点検により原因を特定し、適切な対処を行うことが重要です。
🔧 主要トラブルと対処法一覧
トラブル症状 | 推定原因 | 対処法 | 予防策 |
---|---|---|---|
耕深不安定 | センサー汚れ | 清掃・調整 | 定期清掃 |
左右差発生 | チェーン調整不良 | 再調整実施 | 月次点検 |
振動増大 | PTO軸ずれ | 中心合わせ直し | 作業前確認 |
砕土不良 | 爪磨耗 | 爪交換 | 使用時間管理 |
油圧動作不良 | 油温・油量異常 | オイル点検 | 日常点検 |
緊急時の対処手順として、まず安全確保を最優先とし、エンジン停止とPTO停止を確実に行います。その後、目視による異常箇所の確認を行い、可能な範囲での応急処置を実施します。
定期点検項目も重要な予防策です。使用前点検では、オイル量・チェーン張力・爪の状態・各部の給油状況を確認します。週次点検では、ボルトの緩み・磨耗部品の状態・油圧系統の動作確認を行います。
特に注意すべき磨耗部品の管理では、爪の残存長さが規定値を下回った場合の即座の交換が重要です。磨耗した爪での作業継続は、作業品質の低下だけでなく、ロータリー本体への損傷リスクも高めます。
トラブル記録の維持も重要な管理項目です。発生したトラブルの内容、対処法、修理費用などを記録することで、予防整備の精度向上と、同様トラブルの再発防止につながります。
また、季節的なメンテナンスも計画的に実施することが重要です。作業シーズン前の総合点検、シーズン中の定期点検、シーズン後の保管整備など、年間を通じた整備スケジュールを確立することで、安定した作業継続が可能になります。
まとめ:ヤンマートラクターロータリー調整
最後に記事のポイントをまとめます。
- ヤンマートラクターロータリー調整の基本は回動調節ダイヤルの適切な設定である
- 深耕調整では数字を上げるほど浅い耕うんが可能になる原理を理解する
- 200シリーズ(AF、EF、EG、YT)は共通の調整方法で操作できる
- 均平板の加圧調整により耕うん後の仕上がり状態を制御する
- ホイールゲージ調整で物理的な耕深制限を設定する
- 自動耕深機能を活用することで作業効率と品質が向上する
- 傾き調整はロアリンクの水平化とPTO軸中心合わせから始める
- チェックチェーンの適切な調整により左右バランスを確保する
- 機械に水平状態を記憶させる設定により調整作業を簡素化できる
- 圃場条件に応じた調整値変更が作業品質向上の鍵である
- 春耕うんでは5-6の回動調節設定で精密な種床造成が可能である
- 通常耕うんでは3-4の設定で効率的な土壌改良を実現する
- 定期的な点検とメンテナンスがトラブル予防の基本である
- 磨耗部品の適切な管理と交換時期の遵守が重要である
- 作業前の試し耕うんにより最適な設定値を確認する
調査にあたり一部参考にさせて頂いたサイト
- https://www.youtube.com/watch?v=9nPX2iYshjg
- https://m.youtube.com/watch?v=ifDMktC0yas&pp=ygUQI-OCveODkOaSreeoruW-jA%3D%3D
- https://www.youtube.com/watch?v=exDs7dEB96A
- https://ameblo.jp/kikutinouki/entry-12807838823.html
- https://www.yanmar.com/jp/agri/products/tractor/yt3r_manual/workability.html
- https://greenland-yoro.jp/tractor-rotary/
- https://www.yanmar.com/jp/agri/products/tractor/yt3r/rotary.html
- https://www.obrasconstrutec.com/shopdetail/60196716
- https://www.yanmar.com/jp/agri/products/tractor/yt2a/beautiful.html
- https://note.com/ryutaro0306/n/n014532cd9045