トラクターの空気圧管理は、農作業の安全性と効率性を大きく左右する重要な要素です。しかし、多くの農家さんが「使用時間が少ないから大丈夫」と考えがちで、実は空気圧不足によるトラブルが頻発しています。適正な空気圧を保つことで、タイヤの寿命延長、燃料節約、作業効率向上など多くのメリットが得られます。
一般的にトラクターの空気圧は前輪と後輪で異なり、前輪が160kPa、後輪が140~160kPa程度に設定されています。自動車と比べて低い設定になっているのは、農地での作業に適応するためです。定期的な点検と適切な管理方法を身につけることで、安全で効率的な農作業が実現できるでしょう。
この記事のポイント |
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✅ トラクター前輪・後輪の適正空気圧数値がわかる |
✅ 空気圧低下による具体的な影響と危険性を理解できる |
✅ 正しい点検方法と補充手順がマスターできる |
✅ 長期保管時の管理方法と予防策が身につく |
トラクター空気圧の基本知識と適正値
- トラクター空気圧の適正値は前輪と後輪で異なる
- 空気圧低下によるトラクターへの深刻な影響とは
- トラクター空気圧の点検は年1回以上が推奨される理由
- 空気圧が自動車より低く設定されている理由
- トラクタータイヤは経年劣化による空気圧低下が起こりやすい
- 冬季など長期保管時の空気圧管理の注意点
トラクター空気圧の適正値は前輪と後輪で異なる
トラクターの空気圧は、前輪と後輪で適正値が大きく異なります。**前輪は通常160kPa(1.6kgf/cm²)、後輪は140~160kPa(1.4~1.6kgf/cm²)**に設定されるのが一般的です。この数値はトラクターの機種や用途によって変わるため、必ず取扱説明書で確認することが重要です。
📊 トラクター空気圧の適正値一覧表
部位 | 空気圧(kPa) | 空気圧(kgf/cm²) | 備考 |
---|---|---|---|
前輪 | 160kPa | 1.6kgf/cm² | 機種により120~180kPa |
後輪 | 140~160kPa | 1.4~1.6kgf/cm² | 25馬力前後の場合 |
空気圧の確認方法は複数あります。まず、タイヤの側面(サイドウォール)に記載されている数値を確認しましょう。ここには「○○kPa以下」という形で最大許容空気圧が表示されています。ただし、これはタイヤの性能による適正値であり、実際の使用では取扱説明書の数値を基準にすることが推奨されます。
取扱説明書に記載された数値は、そのトラクター機種に最適化された値です。一般的に、実際の空気圧は取扱説明書の数値以上、タイヤ側面の数値以内で設定します。例えば、前輪タイヤ側面に「1.2kgf/cm²以下」と表示されている場合、実際の充填は0.8~1.2kgf/cm²の範囲内で行います。
空気圧の単位には複数の表記があり、混乱しやすいポイントです。**kPa(キロパスカル)とkgf/cm²(重量キログラム毎平方センチメートル)**が主に使用され、換算式は「1kgf/cm² = 98.07kPa ≒ 100kPa」となります。現在はkPa表記が標準的ですが、古いトラクターではkgf/cm²表記もよく見られます。
空気圧低下によるトラクターへの深刻な影響とは
空気圧の低下は、トラクターの性能と安全性に深刻な影響を与えます。最も危険なのは左右のバランスが悪くなることで、作業時に左右に偏る現象が発生します。これにより、直進性が悪化し、特に斜面での作業時には転倒リスクが高まります。
🚨 空気圧低下による主な影響
影響カテゴリ | 具体的な症状 | 深刻度 |
---|---|---|
操縦性 | 左右バランス悪化、直進性低下 | 高 |
タイヤ劣化 | ひび割れ進行、偏摩耗 | 中 |
燃費・効率 | 燃料消費増加、作業効率低下 | 中 |
安全性 | 転倒リスク増加、ハンドル操作困難 | 高 |
空気圧が低下した状態で荷重がかかると、タイヤが歪みによってひび割れが進行します。特に、重いロータリーや作業機を装着した状態での作業は、タイヤへの負荷が大幅に増加し、寿命を著しく縮める原因となります。トラクタータイヤは高価な部品の一つであり、適切な管理により農業機械が廃車となるまでタイヤ交換なしで使用することも可能です。
道路走行時の影響も深刻です。空気圧不足はハンドル操作に支障をきたし、特にカーブや急ブレーキ時の安定性が著しく低下します。また、タイヤの転がり抵抗が増加するため、燃料消費量が増加し、長期的には大きなコスト増につながります。
長期保管時の影響も見逃せません。空気圧が大きく低下した状態で冬季など長期間保管すると、タイヤが変形してしまいます。一度変形したタイヤは元に戻らず、不均一な摩耗や振動の原因となり、最悪の場合は交換が必要になります。
トラクター空気圧の点検は年1回以上が推奨される理由
トラクターの空気圧点検は、最低でも年に1回以上の実施が強く推奨されています。この頻度が設定される理由は、トラクターの使用特性と保管環境にあります。自動車のように毎日使用する機械と異なり、トラクターは使用時間に比例せずに空気圧が減少する特性があります。
⏰ トラクター空気圧点検の推奨スケジュール
点検タイミング | 理由 | 実施内容 |
---|---|---|
春作業前 | 長期保管後の状態確認 | 全輪測定・補充 |
繁忙期前 | 作業負荷増加に備える | 簡易チェック |
秋作業前 | 夏期の温度変化による変動確認 | 全輪測定・補充 |
冬期保管前 | 長期保管に向けた準備 | 上限値まで充填 |
年1回の点検頻度では、圧力が徐々に下がることを考慮して、タイヤ記載の上限値まで充填することが重要です。例えば、前輪タイヤの上限が1.2kgf/cm²の場合、取扱説明書の規定値が1.0kgf/cm²であっても、年1回点検なら1.2kgf/cm²まで充填します。
しかし、理想的には1~2ヶ月毎の点検を実施することで、取扱説明書の規定値をより正確に維持できます。頻繁な点検により、エアーバルブからの微細な漏れや、タイヤの異常摩耗などの早期発見も可能になります。
点検頻度を減らしたい場合は、規定値より10%程多く入れておく方法が効果的です。例えば、規定値が1.4kgf/cm²の場合、1.5kgf/cm²程度まで充填することで、点検間隔を延ばすことができます。ただし、タイヤ側面記載の上限値を超えないよう注意が必要です。
空気圧が自動車より低く設定されている理由
トラクターの空気圧が自動車より低く設定されているのは、農地での作業に最適化するためです。一般的な積載車の空気圧が6.0kgf/cm²程度であるのに対し、トラクターは1.2~1.6kgf/cm²と大幅に低い値となっています。
🌾 低空気圧設定の理由と効果
理由 | 効果 | 具体例 |
---|---|---|
地面への食い付き向上 | 牽引力増加、スリップ軽減 | 重いロータリーの牽引 |
土壌圧迫軽減 | 作物根への影響最小化 | 収量4~6%向上 |
接地面積拡大 | 安定性向上、沈み込み軽減 | 湿田での作業 |
乗り心地改善 | オペレーターの疲労軽減 | 長時間作業の快適性 |
接地面積の拡大効果は特に重要です。空気圧を160kPaから100kPaに下げると、接地面積が約14%増加します。これにより、同じ重量でも地面にかかる圧力が分散され、土壌の踏み固めを抑制できます。特に、播種後の圃場や成長期の作物間での作業では、この効果が収量に直結します。
低空気圧による牽引力の向上も見逃せません。タイヤが適度に変形することで、地面との摩擦係数が増加し、同じエンジンパワーでもより重い作業機を効率的に牽引できます。坂道での作業や、粘土質の重い土壌での耕起作業において、この効果は特に顕著に現れます。
ただし、低空気圧には注意点もあります。道路走行時の転がり抵抗が増加するため、圃場間の移動では燃料消費が増加する傾向があります。このため、圃場作業と道路走行の比率を考慮して、最適な空気圧を設定することが重要です。
トラクタータイヤは経年劣化による空気圧低下が起こりやすい
トラクタータイヤは自動車タイヤと比較して、経年劣化による空気圧低下が起こりやすい特性があります。これは、使用年数の長さとタイヤ構造の違いに起因します。自動車タイヤが数年で摩耗交換されるのに対し、トラクタータイヤは10年以上使用されることが珍しくありません。
🔧 経年劣化による空気圧低下の要因
劣化要因 | 影響度 | 対策方法 |
---|---|---|
ゴム材質の硬化 | 高 | 定期的な柔軟剤塗布 |
バルブの劣化 | 中 | バルブコア交換 |
チューブの微細亀裂 | 中 | チューブ点検・交換 |
タイヤとリムの密着不良 | 低 | 清掃・再組み付け |
長期使用により、タイヤゴムの分子構造が変化し、気密性が徐々に低下します。特に、紫外線や温度変化にさらされることで、ゴムが硬化し、微細な亀裂から空気が漏れやすくなります。この現象は、使用時間が少ない割に空気圧低下が早い理由の一つです。
バルブからの空気漏れも頻繁に発生します。数ヶ月から数週間単位で徐々にエアーが漏れる場合、エアーバルブからの漏れが疑われます。この場合、バルブコアを交換することで改善が期待できます。バルブコアは比較的安価な部品であり、専用工具を使用すれば簡単に交換可能です。
保管環境の影響も無視できません。屋外保管や温度変化の激しい環境では、タイヤの劣化が加速されます。可能な限り、直射日光を避け、温度変化の少ない場所での保管を心がけることで、タイヤの寿命を延ばし、空気圧の安定性を向上させることができます。
冬季など長期保管時の空気圧管理の注意点
冬季や農閑期の長期保管時には、特別な空気圧管理が必要です。長期保管前には必ず空気圧を上限値まで充填し、保管中の自然減少に備えることが重要です。350日程度休んでいる機械では、この期間中にも空気圧が継続的に低下するためです。
❄️ 長期保管時の空気圧管理チェックリスト
項目 | 実施タイミング | 具体的な作業内容 |
---|---|---|
上限値充填 | 保管開始前 | タイヤ記載上限まで充填 |
定期点検 | 月1回 | 目視確認・簡易測定 |
位置変更 | 2~3ヶ月毎 | タイヤ接地面の変更 |
清掃 | 保管前・保管後 | 泥・異物の除去 |
タイヤの変形防止は長期保管の最重要課題です。空気圧が大きく低下した状態で長期間同じ位置に置かれると、接地面が平らに変形し、復元不可能になります。この変形は「フラットスポット」と呼ばれ、走行時の振動や不均一摩耗の原因となります。
保管場所の選定も重要です。直射日光が当たらず、温度変化の少ない場所が理想的です。屋外保管が避けられない場合は、タイヤカバーやシートで覆うことで、紫外線や温度変化の影響を軽減できます。また、地面からの湿気を避けるため、すのこやパレットの上に置くことも効果的です。
保管中の定期的な移動も変形防止に有効です。月に1回程度、トラクターを少し動かして接地面を変えることで、特定部分への長期荷重を避けることができます。ただし、この際は必ず空気圧を確認し、必要に応じて補充を行ってください。
トラクター空気圧の点検と管理方法
- 空気圧点検に必要な道具と選び方のポイント
- トラクター空気圧の正しい測定手順と補充方法
- エアーバルブからの空気漏れを見つける方法
- 左右の空気圧バランスが重要な理由と調整方法
- 空気圧管理でトラクタータイヤの寿命を延ばすコツ
- プロが実践している効率的な空気圧管理テクニック
- まとめ:トラクター空気圧管理で安全で効率的な農作業を
空気圧点検に必要な道具と選び方のポイント
トラクターの空気圧点検には、専用の道具が必要です。最低限必要なのは空気圧計と空気入れですが、効率的な作業のためには機能性の高い道具選びが重要になります。トラクタータイヤは大型で、一般的な自転車用ポンプでは作業が困難なため、適切な道具の選択が不可欠です。
🛠️ 空気圧点検に必要な道具一覧
道具名 | 必要度 | 価格帯 | 特徴・選び方のポイント |
---|---|---|---|
空気圧計 | 必須 | 1,000~5,000円 | 精度の高いものを選択 |
エアーコンプレッサー | 推奨 | 20,000~50,000円 | タンク容量30L以上が理想 |
エアーチャックガン | 推奨 | 2,000~5,000円 | 減圧機能付きが便利 |
タンク付ポンプ | 代用可 | 3,000~8,000円 | 手動だが確実に充填可能 |
エアーコンプレッサーは最も効率的な選択肢です。トラクターの後輪タイヤは非常に大きいため、手動ポンプでは50回程度の作業が必要になることもあります。コンプレッサーがあれば、短時間で正確な空気圧に調整できます。選択時は、タンク容量30L以上、最大圧力8~10kgf/cm²以上の仕様を目安にしてください。
空気圧計の精度は作業の成否を左右します。デジタル式の方がアナログ式より読み取りやすく、精度も高い傾向があります。ただし、農作業環境では耐久性も重要なため、防塵・防水機能のあるものを選ぶことが推奨されます。測定範囲は0~500kPa(0~5kgf/cm²)程度あれば十分です。
エアーチャックガンは空気の充填と測定を同時に行える便利な道具です。レバー操作で空気を入れ、ゲージで圧力を確認できます。減圧機能付きのものを選べば、入れすぎた場合の調整も簡単です。価格は2,000~5,000円程度で、投資効果の高い道具といえるでしょう。
フットポンプやタンク付ポンプは、電源が不要で確実に作業できるメリットがあります。コンプレッサーが使用できない圃場での応急処置や、電源のない場所での作業に重宝します。ただし、大型タイヤの充填には時間と労力がかかるため、定期点検用としては補助的な位置づけになります。
トラクター空気圧の正しい測定手順と補充方法
正確な空気圧測定には、正しい手順の実行が不可欠です。測定は走行前の冷えている状態で行うことが最も重要なポイントです。走行後にタイヤが温まった状態では、熱膨張により実際より高い数値が表示され、正確な測定ができません。
📋 空気圧測定の正しい手順
手順 | 作業内容 | 注意点 |
---|---|---|
1. 準備 | 走行前の冷間時に実施 | 最低2時間以上の放置後 |
2. 清掃 | バルブ周辺の泥や異物除去 | エアバルブの損傷を防ぐ |
3. 測定 | 空気圧計をバルブに装着 | 垂直に押し付ける |
4. 記録 | 前輪・後輪の数値を記録 | 左右差も確認 |
5. 補充 | 規定値まで空気を充填 | 少しずつ確認しながら |
バルブの位置確認は初心者が戸惑いやすいポイントです。トラクターのエアバルブは、ホイールの内側に配置されていることが多く、角度によっては見つけにくい場合があります。タイヤを少し回転させて、アクセスしやすい位置にバルブを移動させてから作業を開始してください。
空気の補充は少しずつ行い、頻繁に圧力を確認することが重要です。特に大型タイヤでは、一度に大量の空気を入れると規定値を大幅に超えてしまう危険があります。目標値の90%程度まで一気に充填し、その後は少しずつ調整する方法が効率的です。
左右の空気圧を同じ値に合わせることも忘れてはいけません。左右で空気圧が異なると、車体が傾き、操縦性や安全性に悪影響を与えます。前輪同士、後輪同士の空気圧は必ず同じ値になるよう調整してください。差は±0.1kgf/cm²以内に収めることが理想です。
測定値の記録も重要な作業です。日付、天候、測定値、補充量を記録しておくことで、空気圧の減少傾向や異常な変化を早期に発見できます。この記録は、タイヤ交換時期の判断材料としても活用できます。
エアーバルブからの空気漏れを見つける方法
エアーバルブからの空気漏れは、トラクターでよく発生するトラブルの一つです。数ヶ月から数週間で徐々に空気圧が低下する場合、バルブからの漏れが主要な原因として疑われます。早期発見と適切な対処により、大きなトラブルを予防できます。
🔍 エアバルブ漏れの診断方法
診断方法 | 実施手順 | 判定基準 |
---|---|---|
石鹸水テスト | バルブに石鹸水を塗布 | 泡が発生すれば漏れあり |
音響テスト | バルブに耳を近づける | 「シュー」音があれば漏れ |
圧力低下テスト | 一定期間後の圧力変化を測定 | 2週間で10%以上低下は異常 |
目視確認 | バルブ周辺の汚れ・損傷確認 | 変色・亀裂・変形があれば要注意 |
石鹸水テストは最も確実な診断方法です。中性洗剤を薄めた水をバルブ部分に塗布し、泡の発生を確認します。微細な漏れでも泡として視覚化されるため、早期発見が可能です。風の強い日は泡が飛ばされやすいため、無風時に実施することが推奨されます。
バルブからの漏れの多くは、バルブコアの劣化や汚れが原因です。バルブコアは比較的安価な部品(数百円程度)で、専用工具を使用すれば簡単に交換できます。交換作業は、まず完全に空気を抜き、専用工具でバルブコアを反時計回りに回転させて取り外します。
新しいバルブコアの取り付けは、手で軽く締めた後、専用工具で適度に締め付けます。過度に締め付けるとバルブ本体を損傷する可能性があるため、適度な力加減が重要です。取り付け後は、石鹸水テストで漏れがないことを確認してから空気を充填してください。
バルブコア以外の原因として、バルブとホイールの接続部分からの漏れもあります。この場合は、バルブ全体の交換が必要になることが多く、専門業者に依頼することが推奨されます。また、バルブキャップの装着も重要で、汚れや異物の侵入を防ぐ効果があります。
左右の空気圧バランスが重要な理由と調整方法
左右のタイヤ空気圧バランスは、トラクターの安全運行において極めて重要な要素です。わずか0.2kgf/cm²の差でも、操縦性に大きな影響を与える可能性があります。特に、斜面での作業や高速での道路走行時には、この影響が顕著に現れます。
⚖️ 左右空気圧バランスの影響と対策
空気圧差 | 影響レベル | 具体的な症状 | 対策 |
---|---|---|---|
0.1kgf/cm²以下 | 軽微 | ほぼ影響なし | 理想的な状態 |
0.2kgf/cm² | 中程度 | 軽微な引っ張り感 | 早急な調整推奨 |
0.3kgf/cm² | 重大 | 明らかな操縦困難 | 即座に調整必要 |
0.5kgf/cm²以上 | 危険 | 転倒リスク増大 | 使用中止・即時対応 |
車体の傾きは左右バランス不良の最も分かりやすい症状です。空気圧の低い側にトラクターが傾き、まっすぐ走行しているつもりでも徐々に片側に寄ってしまいます。この現象は、平坦な道路では軽微に感じられても、斜面や不整地では制御困難になる可能性があります。
左右バランスの調整は、圧力の高い方から低い方に合わせることから始めます。エアーチャックガンに減圧機能がある場合は、高い方の圧力を下げて調整します。減圧機能がない場合は、バルブコアを軽く押して空気を抜き、圧力を下げてから両方を適正値まで充填し直します。
作業機装着時の影響も考慮が必要です。重いロータリーや播種機を装着すると、重量バランスが変化し、左右の接地圧が変わります。このため、作業機を装着した状態での空気圧調整が推奨されます。特に、非対称な作業機や片側に重心が偏る機械の場合は、注意深い調整が必要です。
定期的な左右差チェックを習慣化することが重要です。毎回の点検時に、前輪同士、後輪同士の空気圧を比較し、記録に残すことで、特定のタイヤの空気漏れや異常摩耗を早期発見できます。この記録は、タイヤ交換時期の判断や、機械の不具合発見にも役立ちます。
空気圧管理でトラクタータイヤの寿命を延ばすコツ
適切な空気圧管理により、トラクタータイヤの寿命を2~3倍延ばすことも可能です。高価なトラクタータイヤを長期間使用するためには、空気圧以外の要因も含めた総合的な管理が必要になります。
🔧 タイヤ寿命延長のための管理ポイント
管理項目 | 実施頻度 | 効果 | 具体的な方法 |
---|---|---|---|
空気圧調整 | 月1回以上 | 偏摩耗防止 | 規定値±5%以内維持 |
清掃 | 使用後毎回 | 異物による損傷防止 | 泥・石・針金等の除去 |
ローテーション | 年1~2回 | 摩耗均一化 | 前後・左右の位置交換 |
保管方法 | 農閑期 | 劣化抑制 | 直射日光・温度変化回避 |
適正空気圧の維持は最も基本的で効果的な方法です。規定値の±5%以内を維持することで、タイヤの変形を最小限に抑え、均一な摩耗を実現できます。特に、低空気圧による偏摩耗は回復不可能なため、予防が重要です。
清掃の重要性は過小評価されがちですが、タイヤ寿命に大きく影響します。農作業後に付着した泥や石、針金などの異物は、タイヤゴムを傷つけたり、亀裂の原因となります。特に、溝に詰まった石は走行中に飛び出して危険なだけでなく、タイヤを内部から押し広げて損傷させる可能性があります。
タイヤローテーションは自動車では一般的ですが、トラクターでも有効な方法です。前輪と後輪では摩耗パターンが異なるため、定期的に位置を交換することで、各タイヤの摩耗を均一化できます。ただし、前輪と後輪でサイズが異なる場合は、左右のローテーションのみ実施します。
保管環境の最適化も長期的には大きな効果があります。直射日光によるゴムの劣化、温度変化による膨張・収縮の繰り返し、湿気による金属部分の腐食など、保管環境による影響は使用による摩耗と同程度に重要です。可能な限り、屋内での保管や適切なカバーを使用することが推奨されます。
プロが実践している効率的な空気圧管理テクニック
農機販売店や大規模農家では、効率的な空気圧管理システムを構築しています。これらのプロのテクニックを参考にすることで、個人農家でも効率的な管理が可能になります。
💡 プロの空気圧管理テクニック
テクニック | 効果 | 導入コスト | 実施方法 |
---|---|---|---|
定期巡回点検 | 異常の早期発見 | 低 | 月1回の全機械点検 |
デジタル記録 | データ分析による予測 | 中 | スマホアプリ活用 |
予備部品常備 | 迅速な修理対応 | 低 | バルブコア・ゲージ等 |
温度補正 | 季節変動への対応 | 低 | 気温による圧力調整 |
定期巡回点検は、複数台のトラクターを効率的に管理する方法です。月1回、全機械の空気圧を一括チェックし、異常があれば即座に対応します。この際、チェックシートを活用して、測定値、異常の有無、実施した対応を記録します。
デジタル記録の活用も現代的なアプローチです。スマートフォンアプリや表計算ソフトを使用して、各機械の空気圧データを蓄積します。これにより、空気圧の減少傾向を分析し、タイヤ交換時期の予測や、異常な減少パターンの早期発見が可能になります。
温度補正は意外に見落とされがちなテクニックです。気温が10℃変化すると、タイヤ内の空気圧は約0.1kgf/cm²変動します。夏場に調整した空気圧は、冬場には不足気味になる可能性があります。季節の変わり目には、この温度による変動を考慮した調整が必要です。
プロは予備部品の常備により、トラブル時の迅速な対応を実現しています。バルブコア、タイヤゲージ、応急修理キットなどを常に準備しており、圃場での突発的なトラブルにも即座に対応できます。これらの部品コストは比較的安価であり、作業の中断時間短縮による効果は大きいといえます。
まとめ:トラクター空気圧管理で安全で効率的な農作業を
最後に記事のポイントをまとめます。
- トラクター前輪の適正空気圧は160kPa、後輪は140~160kPaが一般的である
- 空気圧は取扱説明書とタイヤ側面の表示を両方確認して設定する
- 空気圧低下により左右バランスが悪化し転倒リスクが増大する
- タイヤの歪みやひび割れ進行により寿命が著しく短縮される
- 年1回以上の定期点検が推奨され、理想的には1~2ヶ月毎が良い
- 自動車より低い空気圧設定は農地作業に最適化するためである
- 経年劣化によりゴム材質が硬化し気密性が低下しやすい
- 長期保管前は必ず上限値まで充填し変形を防止する
- エアーコンプレッサーとデジタル空気圧計が効率的な道具である
- 測定は走行前の冷間時に実施することが重要である
- エアーバルブからの漏れは石鹸水テストで早期発見できる
- 左右の空気圧差は0.1kgf/cm²以内に調整する
- 適切な管理によりタイヤ寿命を2~3倍延ばすことが可能である
- 清掃と適切な保管がタイヤ劣化抑制に効果的である
- 温度変化による圧力変動を考慮した季節調整が必要である
調査にあたり一部参考にさせて頂いたサイト
- https://kikaim.com/toratai.html
- https://ameblo.jp/kikutinouki/entry-12807619656.html
- https://www.agri-ya.jp/column/2023/04/28/explain-how-to-check-and-fill-tractor-tire-pressure/
- https://minkara.carview.co.jp/userid/723508/car/1260686/4052240/note.aspx
- https://business.michelin.co.jp/help-advice/farm-vehicles/tyre-pressure-tractor-automatic-or-manual
- https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/1807/25/news031.html
- https://business.michelin.co.jp/agriculture
- https://faq.yanmar.com/jp/detail?site=FIWWZ5OB&category=1&id=198&hot_list=true
- https://search.rakuten.co.jp/search/mall/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC+%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A4+%E7%A9%BA%E6%B0%97%E5%9C%A7/
- https://agriculture.kubota.co.jp/after-support/self-maintenance/tractor/10.html