草刈機のシャフト構造について詳しく知りたいと思ったことはありませんか?実は、シャフトは草刈機の心臓部とも言える重要なパーツで、その構造を理解することで故障の早期発見や適切なメンテナンスが可能になります。一般的に使われている鉄製シャフトから最新の3ピース構造まで、多様な技術が採用されており、それぞれに特徴と利点があります。
本記事では、草刈機シャフト構造の基本から最新技術、そして実際の故障事例と対処法まで、幅広い情報を網羅的にお伝えします。シャフトの摩耗による異音発生から交換費用、さらには分解図を交えた詳細な構造解説まで、初心者にもわかりやすく説明していきます。この記事を読むことで、あなたの草刈機をより長く、より安全に使用できるようになるでしょう。
この記事のポイント |
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✅ 草刈機シャフトの基本構造と各部品の役割がわかる |
✅ 故障の症状と原因を見極める診断方法を習得できる |
✅ シャフト交換の費用相場と作業手順を理解できる |
✅ 最新の3ピース構造技術とそのメリットを把握できる |
草刈機シャフト構造の基本知識と仕組み
- 草刈機シャフト構造の基本的な仕組みとは
- シャフトを構成する主要部品とその役割について
- 駆動シャフトの動力伝達メカニズムを理解する
- シャフト内部のベアリングとギア配置の重要性
- 分割式シャフトと一体式シャフトの違いとは
- シャフトパイプの材質による性能差を知る
草刈機シャフト構造の基本的な仕組みとは
草刈機のシャフト構造は、エンジンの回転力を刈刃まで確実に伝達する重要な機構です。基本的な構成は、エンジン側から順に遠心クラッチ、ドライブシャフト、ギアケース(ヘッド)、そして刈刃という流れになっています。
シャフト部分は主に中空のパイプ内に回転軸が通っている構造で、この回転軸がスプライン(溝)加工されており、動力を効率的に伝達します。パイプの材質は従来のアルミニウム製から、最近では軽量で振動減衰効果の高いCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製も採用されています。
特に重要なのはシャフトの真直度と同軸度で、これらの精度が低いと振動や異音の原因となります。一般的に真直度は0.2/650mm以下、同軸度は0.1以下という高い精度が求められており、この精度を維持するために特殊な製造技術が用いられています。
🔧 シャフト構造の基本要素
部品名 | 役割 | 重要ポイント |
---|---|---|
遠心クラッチ | エンジン回転を制御して伝達 | 低回転時は動力カット |
ドライブシャフト | 回転力をギアケースまで伝達 | 真直度が重要 |
ギアケース | 回転方向を90度変換 | グリス潤滑が必要 |
刈刃取付部 | 刈刃を固定 | 左ネジ構造が一般的 |
現代の草刈機では、振動減衰技術も重要な要素となっています。長時間の使用による「はくろう病」などの振動障害を防ぐため、シャフト内部に振動を吸収する機構が組み込まれているモデルも増えています。これにより、作業者の健康を守りながら効率的な作業が可能になっています。
シャフトを構成する主要部品とその役割について
草刈機のシャフトシステムは複数の精密部品で構成されており、それぞれが重要な役割を担っています。最も重要なのはスプライン軸で、これはエンジンからの回転力を刈刃まで伝達する中心的な部品です。
スプライン軸は高強度材料のS48C、STKM17C、SWRH62Bなどで製造され、外径5.5~11mm、全長100~2500mmという幅広いサイズに対応しています。この軸には精密な溝(スプライン)が加工されており、ギアケース内のギアと確実に噛み合うことで動力を伝達します。
パイプ内の支持機構も重要な要素です。一般的に4箇所にシャフトを中心に保持する部分があり、ここでシャフトの振れを抑制しています。この部分が摩耗すると振動や異音の原因となるため、定期的な点検が必要です。
🔩 主要部品の詳細仕様
部品名 | 材質 | 重要機能 | メンテナンス頻度 |
---|---|---|---|
スプライン軸 | 特殊鋼材 | 動力伝達 | 年1回点検 |
支持ベアリング | 樹脂または金属 | 軸受け | 50時間毎 |
パイプ本体 | アルミ/CFRP | 保護・軽量化 | 100時間毎 |
ジョイント部 | 高張力鋼 | 分割機能 | 年2回点検 |
最新技術では3ピース構造が注目されています。これは従来の一体構造とは異なり、両端の廻止め部にクロモリ鋼を採用し、浸炭熱処理によってHV800という高硬度を実現しています。中間部には独自開発のFSP-800という高強度パイプ材料を使用することで、タフネスと軽量化を両立させています。
駆動シャフトの動力伝達メカニズムを理解する
草刈機の動力伝達メカニズムは、エンジンの回転運動を効率的に刈刃まで届ける精密なシステムです。このプロセスは複数の段階に分かれており、それぞれで重要な機能を果たしています。
まず、エンジンのフライホイール中央に設置された遠心クラッチが動力制御の起点となります。エンジンが低回転(アイドリング状態)の時は、スプリングの力でクラッチシューが開かず、動力は伝達されません。しかし、スロットルを上げて高回転になると、遠心力がスプリングの力に勝ってクラッチシューが開き、ドラムの内側を押さえることで回転力が伝わります。
スプライン軸による動力伝達では、軸に刻まれた精密な溝がキーとなります。この溝は一般的に7本または9本のスプライン構造となっており、回転トルクを確実に伝達しながら、必要に応じて軸方向の移動も可能にしています。
⚙️ 動力伝達の流れ
段階 | 部品 | 機能 | 回転数変化 |
---|---|---|---|
1次 | 遠心クラッチ | 動力制御 | エンジン回転そのまま |
2次 | スプライン軸 | 回転伝達 | 変化なし |
3次 | ベベルギア | 方向転換 | 減速(約1/2) |
4次 | 刈刃 | 切断作業 | 最終回転数 |
ギアケース内では**ベベルギア(傘歯車)**により、水平方向の回転を垂直方向に変換します。この際、ギア比により回転数が調整され、一般的には入力回転数の約1/2になります。これにより、エンジンの高回転を刈刃に適した回転数に変換しながら、トルクを増大させています。
現代的な草刈機では、振動減衰機構も動力伝達システムに組み込まれています。スプリングダンパー一体型シャフトやダンパークラッチドラムなどにより、エンジンからの振動を軽減し、作業者への負担を大幅に削減しています。
シャフト内部のベアリングとギア配置の重要性
シャフト内部のベアリングとギア配置は、草刈機の性能と耐久性を決定する最も重要な要素の一つです。特にギアケース(ヘッド部分)内の構成は、長期間の安定した動作に直結します。
ベアリングはスプライン軸を正確に支持し、滑らかな回転を実現する役割を担っています。一般的にはボールベアリングが使用され、上下2箇所で軸を支持しています。このベアリングが摩耗や破損すると、軸のブレや異音、最悪の場合はギア破損につながります。
ベベルギアの配置と噛み合いも極めて重要です。入力側のピニオンギアと出力側のリングギアは、精密な角度と間隙で配置されており、この精度が低いと騒音や早期摩耗の原因となります。ギア比は一般的に1:2程度で設定され、エンジンの高回転を刈刃に適した回転数に調整しています。
🔧 ベアリングとギアの配置構造
部品名 | 設置位置 | 主要機能 | 交換目安 |
---|---|---|---|
上部ベアリング | 入力軸支持部 | 入力軸の安定 | 200時間 |
下部ベアリング | 出力軸支持部 | 出力軸の支持 | 200時間 |
ピニオンギア | 入力側 | 動力受け | 300時間 |
リングギア | 出力側 | 最終出力 | 300時間 |
潤滑システムも重要な要素です。ギアケース内は専用グリースで満たされており、これがベアリングとギアの潤滑・冷却・防錆を担っています。グリースが不足すると急激な摩耗が進行するため、定期的な補給が必要です。一般的に50時間使用毎、または年1回の交換が推奨されています。
最新の技術では、同軸度向上技術により0.1以下という極めて高い精度を実現しています。これにより振動を大幅に削減し、ベアリングとギアの寿命を延ばすとともに、作業者の疲労軽減にも寄与しています。
分割式シャフトと一体式シャフトの違いとは
草刈機のシャフトには分割式と一体式の2つのタイプがあり、それぞれに明確な特徴と用途の違いがあります。この選択は、作業環境や使用頻度、保管場所などを考慮して決める必要があります。
分割式シャフトは、中間部分でシャフトを分割できる構造になっており、運搬性と保管性に優れた設計となっています。分割部分には専用のジョイント機構が設けられており、ワンタッチまたは簡単な操作で分離・結合が可能です。特に軽トラックでの運搬や物置での保管において、大きなメリットを発揮します。
一方、一体式シャフトは分割機構がない代わりに、構造的な強度と振動特性に優れています。ジョイント部分がないため、動力伝達効率が高く、振動の発生源も少なくなります。プロの造園業者や農業従事者など、高い性能を求める用途に適しています。
📏 分割式と一体式の比較
項目 | 分割式 | 一体式 |
---|---|---|
運搬性 | ◎ 軽トラック積載可能 | △ 長尺車両必要 |
保管性 | ◎ コンパクト収納 | △ 長尺保管必要 |
動力効率 | ○ ジョイント損失あり | ◎ 直接伝達 |
振動特性 | ○ ジョイント部で発生 | ◎ 一体構造で少ない |
価格 | △ ジョイント分高価 | ○ シンプル構造 |
メンテナンス | △ ジョイント部要注意 | ○ 単純構造 |
ジョイント機構の技術も進歩しており、最新のスムースジョイントでは従来の別部品だったジョイントを一体化し、部品点数を削減しています。独自形状のスプラインにより、マルチタイプでの装着時の引っ掛かりを解消し、スムースな着脱を実現しています。
分割式の場合、ジョイント部分の定期点検が重要になります。ここの摩耗や緩みは動力伝達不良や振動増大の原因となるため、使用前の確認と定期的なグリースアップが必要です。一体式の場合は、このような心配がない代わりに、運搬時の注意が必要になります。
シャフトパイプの材質による性能差を知る
シャフトパイプの材質選択は、草刈機の重量、振動特性、耐久性に大きな影響を与える重要な要素です。従来のアルミニウム製から最新のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)まで、各材質には明確な特徴があります。
アルミニウム製パイプは長年にわたって標準的に使用されてきた材質で、軽量性とコストバランスに優れています。加工性が良く、大量生産に適しているため、エントリーモデルから中級機まで幅広く採用されています。ただし、振動減衰性能は限定的で、長時間使用時の疲労軽減効果は期待できません。
一方、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製パイプは革新的な材質として注目されています。重量はアルミの約2/3程度でありながら、金属並みの高強度を実現しています。さらに重要なのは、FRPの特徴である優れた振動減衰性能で、対数振動減衰比率を大幅に向上させています。
🏗️ 材質別性能比較
材質 | 重量比 | 強度 | 振動減衰 | コスト | 耐久性 |
---|---|---|---|---|---|
アルミニウム | 100% | ○ | △ | ◎ | ○ |
CFRP | 67% | ◎ | ◎ | △ | ◎ |
高張力鋼 | 120% | ◎ | △ | ○ | ◎ |
ジュラルミン | 85% | ◎ | ○ | △ | ○ |
特殊強硬度材料を使用したシャフトも存在します。S48C、STKM17C、SWRH62Bなどの特殊鋼材を使用することで、極めて高い耐久性を実現しています。これらの材質は主に業務用の高負荷対応機種に採用されており、山林作業や造園業務などの過酷な環境での使用に適しています。
最新の技術では、材料の組み合わせによる最適化も進んでいます。3ピース構造では、高負荷がかかる両端部にクロモリ鋼を使用し、中間部には軽量なFSP-800パイプを採用することで、強度と軽量化を両立させています。この技術により、従来の常識を超えるタフネスさを実現しています。
草刈機シャフト構造のトラブル対応と最新技術
- シャフト故障の症状別診断方法を身につける
- 草刈機シャフト交換の費用相場と作業手順
- シャフト異音の原因特定と修理のポイント
- 分解図で理解する草刈機の内部構造
- 最新3ピース構造技術のメリットと選び方
- シャフトメンテナンスで延ばす草刈機寿命
- まとめ:草刈機シャフト構造の重要ポイント
シャフト故障の症状別診断方法を身につける
草刈機のシャフト故障は明確な症状として現れるため、早期発見により大きなトラブルを未然に防ぐことができます。適切な診断により、修理費用を抑制し、作業の中断時間を最小限にできます。
最も典型的な症状は異音の発生です。特に「カラカラ」という金属音は、スプライン軸の摩耗を示している可能性が高く、即座の点検が必要です。実際の修理事例では、約1cmのギザギザ溝が摩耗により機能しなくなり、シャフトが1cm以上ずれることで異音が発生したケースが報告されています。
振動の異常も重要な診断ポイントです。通常の草刈機では軽微な振動は避けられませんが、急激な振動の増加や不規則な振動は、ベアリングの摩耗やギア破損を示唆しています。ハンドル部分で感じる振動パターンを注意深く観察することで、故障箇所を特定できます。
🔍 症状別故障診断表
症状 | 推定原因 | 緊急度 | 対処法 |
---|---|---|---|
カラカラ音 | スプライン摩耗 | 高 | 即座に使用停止・点検 |
ガラガラ音 | ベアリング破損 | 高 | ギアケース交換 |
刃の振れ | シャフト曲がり | 中 | シャフト交換 |
回転不良 | ギア破損 | 高 | ギアケースASSY交換 |
異常振動 | 全体的摩耗 | 中 | 総合点検 |
刃が回転しない症状では、複数の原因が考えられます。ギアケース内のベベルギアやベアリングの摩耗・破損、シャフトスプラインの摩耗、遠心クラッチシューの摩耗などが主な要因です。この場合、エンジンは正常に動作するため、動力伝達系統の問題と判断できます。
診断の際は段階的なアプローチが効果的です。まずエンジンを停止した状態で手動でシャフトを回転させ、引っ掛かりや異常な重さがないかを確認します。次に、ギアケース部分を手で持って振動や遊びを確認し、最後にエンジンを始動して実際の動作を観察します。
草刈機シャフト交換の費用相場と作業手順
草刈機のシャフト交換は比較的高額な修理作業となるため、事前の費用把握と適切な業者選択が重要です。部品代と工賃を合わせると、機種によっては新品購入を検討した方が良い場合もあります。
シャフト交換の費用相場は、機種や故障箇所により大きく異なります。一般的な肩掛け式草刈機の場合、ドライブシャフト単体で8,000円~15,000円程度、ギアケースASSYで12,000円~25,000円程度が相場となっています。これに工賃として3,000円~8,000円が加算されます。
作業手順は専門的な技術を要するため、一般的には農機具店での対応が推奨されます。まず、エンジン部分とシャフトの分離、続いてギアケースからシャフトの取り外し、新しいシャフトの組み付け、最終的な動作確認という流れになります。
💰 シャフト交換費用の内訳
部品・作業項目 | 費用相場 | 備考 |
---|---|---|
ドライブシャフト | 8,000円~15,000円 | 機種により変動 |
ギアケースASSY | 12,000円~25,000円 | ベアリング込み |
工賃(分解・組立) | 3,000円~8,000円 | 作業時間2-4時間 |
調整・動作確認 | 1,000円~2,000円 | 最終点検 |
合計 | 24,000円~50,000円 | 機種・故障範囲による |
古い機種の場合は部品調達が困難な場合があります。製造終了から10年以上経過した機種では、部品の在庫がない可能性が高く、中古部品や互換品での対応となることがあります。この場合、費用は抑えられますが、耐久性や性能の保証は限定的になります。
交換作業のポイントとして、単一部品の交換よりもギアケースASSYでの交換が推奨されます。これは、シャフト故障の多くがベアリングやギアの同時摩耗を伴っているためで、部分的な修理では短期間での再故障リスクが高いからです。
DIYでの交換は専門工具と技術が必要なため推奨されません。特にスナップリングの取り外しや、ベアリングの圧入作業には専用工具が必要で、不適切な作業により更なる破損を招く可能性があります。
シャフト異音の原因特定と修理のポイント
シャフトから発生する異音は故障の前兆を示す重要なサインであり、音の種類や発生タイミングから原因を特定することができます。早期の対応により、大規模な修理を避けることが可能です。
「カラカラ」という乾いた金属音は、最も警戒すべき症状の一つです。実際の修理事例では、この音がスプライン軸の摩耗により発生し、シャフトが軸方向に1cm以上移動することで異音が生じていました。この症状が現れた場合、ギザギザの溝が削れて機能していない可能性が高く、即座の修理が必要です。
「ガラガラ」という重い金属音は、ベアリングの破損やギアの噛み合い不良を示しています。この音は回転中に連続的に発生し、負荷をかけると顕著になります。放置すると完全な動力伝達不良に至るため、早急な対応が求められます。
🔊 異音の種類と対処法
音の種類 | 発生タイミング | 推定原因 | 対処の緊急度 |
---|---|---|---|
カラカラ音 | 回転時・角度変更時 | スプライン軸摩耗 | 緊急(即停止) |
ガラガラ音 | 回転中連続 | ベアリング破損 | 緊急(即停止) |
キューキュー音 | 高負荷時 | 潤滑不良 | 要注意(グリス補給) |
断続的な音 | 回転開始時 | クラッチ摩耗 | 要点検 |
修理のポイントとして、応急処置と恒久対策を区別することが重要です。スプライン摩耗の事例では、パイプを0.75cm短縮し、残った溝を有効活用する応急処置により作業を継続できました。ただし、これは一時的な対策であり、恒久的には部品交換が必要です。
異音の発生位置を特定する方法も重要です。肩掛けベルトの引っ掛け部分付近から音が聞こえる場合はシャフト本体の問題、ギアケース部分から聞こえる場合はギア系統の問題と判断できます。エンジンを止めた状態で手動回転させ、どの部分で音が発生するかを確認することで、より正確な診断が可能になります。
予防的な対策として、定期的なグリスアップと点検が効果的です。50時間使用毎のグリス補給により、多くの異音トラブルを未然に防ぐことができます。また、作業後の清掃と乾燥により、水分による腐食や固着を防止できます。
分解図で理解する草刈機の内部構造
草刈機の内部構造を分解図で理解することで、適切なメンテナンスと故障診断が可能になります。各部品の配置と相互関係を把握することで、トラブル時の対応も的確に行えるようになります。
エンジン部分の構造では、フライホイール中央に遠心クラッチが配置されています。この遠心クラッチは、クラッチシュー、スプリング、ドラムから構成され、エンジン回転数に応じて自動的に動力を断続します。クラッチシューは通常2個のスプリングで制御されており、遠心力とスプリング力のバランスで動作します。
シャフト部分の詳細構造では、メインパイプ内にスプライン軸が配置され、通常4箇所の支持点で軸を支えています。この支持部分は樹脂または金属製のブッシュで構成され、シャフトの振れを抑制する重要な役割を担っています。
🔧 主要部品の分解構造
部位 | 主要部品 | 材質 | 機能 |
---|---|---|---|
エンジン側 | 遠心クラッチ | 鋳鉄・樹脂 | 動力断続 |
シャフト部 | スプライン軸 | 特殊鋼 | 動力伝達 |
支持部 | ブッシュ(4箇所) | 樹脂・金属 | 軸支持 |
ギアケース | ベベルギア | 焼入鋼 | 動力変換 |
出力部 | 刃受金具 | ステンレス | 刈刃固定 |
ギアケース(ヘッド)の内部構造は最も複雑な部分です。入力側のピニオンギア、出力側のリングギア、上下のベアリングが精密に組み合わされています。これらの部品はスナップリングで固定されており、分解には専用工具が必要です。
分割式シャフトの場合、中間部にジョイント機構が配置されます。このジョイントは内側のスプライン軸と外側のスリーブで構成され、ワンタッチまたはねじ込み式で着脱できる構造になっています。ジョイント部分にはOリングやガスケットが配置され、内部への異物侵入を防いでいます。
最新の3ピース構造では、従来の一体構造とは大きく異なります。両端の廻止め部分は独立したクロモリ鋼製部品となっており、浸炭熱処理によりHV800という極めて高い硬度を実現しています。中間部は軽量なFSP-800パイプを使用し、全体の軽量化を図っています。
最新3ピース構造技術のメリットと選び方
3ピース構造は従来の草刈機シャフト技術を革新する画期的な技術として、1990年のプロジェクト開始から長年の開発を経て完成されました。この技術は「業界の常識を超える」をコンセプトに開発され、現在では多くのプロフェッショナル向け機種に採用されています。
最大の特徴であるタフネスさは、両端廻止め部にクロモリ鋼を採用し、浸炭熱処理を施すことで実現されています。従来にはない高硬度(~HV800)により、廻止め部の摩耗を大幅に軽減し、長期間の使用に耐える耐久性を獲得しています。
軽量化との両立も重要なメリットです。中間シャフトには独自開発の高強度パイプ材料FSP-800を採用することで、強度を犠牲にすることなく大幅な軽量化を実現しています。これにより、長時間の作業でも疲労を軽減し、作業効率を向上させています。
⚡ 3ピース構造の技術的優位性
項目 | 従来構造 | 3ピース構造 | 改善効果 |
---|---|---|---|
廻止め部硬度 | HV400-500 | HV800 | 摩耗寿命2倍以上 |
重量 | 標準 | 15-20%軽量 | 疲労軽減 |
振動減衰 | 標準 | 30%向上 | 快適性向上 |
同軸度 | 0.2以下 | 0.1以下 | 精度2倍向上 |
ダンパー機能の統合も革新的な要素です。業界初のスプリングダンパー一体型シャフトにより、草刈機の振動・振幅を大幅に低減し、プロ向けの仕様を実現しています。同様の機構を搭載したダンパークラッチドラムも開発され、エンジン側での振動軽減も可能になっています。
選び方のポイントとして、使用環境と頻度を考慮することが重要です。週1回程度の家庭用途であれば従来構造でも十分ですが、毎日数時間使用するプロフェッショナル用途では、3ピース構造のメリットが明確に現れます。特に、山林作業や造園業務など、高負荷での使用が想定される場合には、投資効果が高くなります。
価格差と投資効果も検討要素です。3ピース構造は製造コストが高いため、価格は従来品の1.5~2倍程度になりますが、耐久性と作業効率の向上により、長期的にはコストパフォーマンスに優れています。特に、部品交換頻度の削減と作業時間短縮により、総コストでは有利になる場合が多くあります。
シャフトメンテナンスで延ばす草刈機寿命
適切なシャフトメンテナンスは草刈機の寿命を大幅に延ばす最も効果的な方法です。定期的な点検と適切な手入れにより、20~30年の長期使用も可能になります。
最も重要なのはグリスアップです。ギアケース内のグリスは、ベアリングとギアの潤滑・冷却・防錆を担っており、これが不足すると急激な摩耗が進行します。一般的に50時間使用毎、または年1回の交換が推奨されており、グリス注入口から専用グリスを補給します。
清掃と乾燥も重要な要素です。作業後は必ず水洗いし、コンプレッサーでエアブローして水分を完全に除去します。水分が残ると腐食や固着の原因となるため、特にシャフト継手部分の乾燥は念入りに行う必要があります。
🛠️ 定期メンテナンススケジュール
頻度 | 点検項目 | 作業内容 | 重要度 |
---|---|---|---|
使用毎 | 外観点検 | 損傷・変形確認 | 高 |
10時間毎 | グリス確認 | 量・状態チェック | 高 |
50時間毎 | グリス交換 | 完全入れ替え | 最高 |
100時間毎 | 分解点検 | 内部部品確認 | 高 |
年1回 | 総合点検 | 専門業者診断 | 高 |
スプライン軸の点検では、軸の摩耗状態を定期的に確認します。特に溝の深さと形状を目視で確認し、異常な摩耗や欠けがないかをチェックします。軽微な摩耗であれば継続使用可能ですが、深い摩耗や欠けが見つかった場合は早期の交換が必要です。
振動チェックも重要な診断方法です。正常な草刈機では軽微で規則的な振動しか発生しませんが、ベアリングやギアの摩耗により不規則で大きな振動が発生します。ハンドル部分で感じる振動の変化を定期的に確認し、異常を早期発見することが重要です。
部品交換のタイミングを適切に判断することで、大きな故障を防ぐことができます。ベアリングは200時間、ギアは300時間程度が交換の目安ですが、使用環境により大きく変わります。異音や振動の発生は交換時期のサインであり、これらの症状が現れたら早めの対応が必要です。
予防的メンテナンスにより、修理費用を大幅に削減できます。定期的なグリス交換(年間2,000円程度)により、高額なギアケース交換(20,000円以上)を回避できるため、長期的には大きな経済効果が得られます。
まとめ:草刈機シャフト構造の重要ポイント
最後に記事のポイントをまとめます。
- 草刈機のシャフトはエンジンの回転力を刈刃まで伝達する中核部品である
- スプライン軸、ベアリング、ギアケースが主要構成要素となっている
- 遠心クラッチがエンジン回転数に応じて動力を自動制御している
- シャフト内部には4箇所の支持機構が配置され軸の振れを抑制している
- 分割式は運搬性に優れ、一体式は動力効率と振動特性で勝る
- CFRP製パイプは軽量性と振動減衰性能を両立させている
- カラカラ音はスプライン摩耗、ガラガラ音はベアリング破損を示す
- シャフト交換費用は部品代と工賃で24,000円~50,000円が相場である
- 異音の種類と発生タイミングから故障箇所を特定できる
- 3ピース構造は両端にクロモリ鋼を使用しHV800の高硬度を実現している
- 中間部にFSP-800パイプを採用し軽量化との両立を図っている
- ダンパー一体型シャフトにより振動を大幅に軽減している
- 50時間毎のグリス交換が最も重要なメンテナンス項目である
- 作業後の清掃と乾燥により腐食と固着を防止できる
- 定期的な振動チェックにより故障の前兆を早期発見できる
調査にあたり一部参考にさせて頂いたサイト
- https://blog.goo.ne.jp/tack3304/e/a8bbd2f6deb732b9562982600ae4c71f
- https://www.fine-steel.co.jp/business/tbshaft/
- https://www.ec.boku-nou.jp/2024/01/%E8%8D%89%E5%88%88%E6%A9%9F-2/
- https://www.monotaro.com/s/q-%E8%8D%89%E5%88%88%E6%A9%9F%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%95%E3%83%88/
- https://suehirok.co.jp/products/lawn-mower-item/
- https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%95%E3%83%88%E3%82%B3%E3%83%8D%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC-%E3%82%B3%E3%83%8D%E3%82%AF%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%97-%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%84%E3%83%BC%E3%83%AB-%E4%BA%A4%E6%8F%9B%E9%83%A8%E5%93%81-%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E6%A7%8B%E9%80%A0/dp/B0CJQ9R74N
- https://www.koshin-ltd.jp/products/detail.php?id=3268&preview=1&fm=agency
- https://www.engineer314.com/kusakariki.html
- https://www.koshin-ltd.jp/products/3269.html
- https://csbullitt.com/%E8%8D%89%E5%88%88%E6%A9%9F%E3%81%AE%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%BA/