トラクターを長く大切に使うためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。その中でも特に重要なのがグリスアップです。グリスアップは金属部品の摩擦を防ぎ、サビや摩耗から機械を守る重要な作業で、適切に行うことでトラクターの寿命を大幅に延ばすことができます。
しかし、どこにグリスを塗ればいいのか、どのくらいの頻度で行えばいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。この記事では、トラクターのグリスアップについて基本的な知識から実践的な方法まで、初心者の方にもわかりやすく詳しく解説します。正しいグリスアップを身につけて、愛用のトラクターを長持ちさせましょう。
この記事のポイント |
---|
✅ トラクターグリスアップの基本知識と重要性 |
✅ グリスアップの適切な頻度とタイミング |
✅ 重要なグリスアップ箇所と具体的な方法 |
✅ トラブル対処法と注意すべきポイント |
トラクターのグリスアップの基本知識と重要性
- トラクターグリスアップとは金属部品の摩擦を防ぐ重要なメンテナンス
- グリスアップの頻度は50時間または1年のどちらか早い時期
- ユニバーサルジョイントは最重要なグリスアップ箇所
- グリスの種類は4つあり用途に応じて使い分ける
- グリスアップに必要な道具はグリスガンとグリス
- ペダル支点のグリスアップは運転台真下で実施
トラクターグリスアップとは金属部品の摩擦を防ぐ重要なメンテナンス
トラクターのグリスアップとは、機械の可動部分や軸受けにグリス(潤滑油)を注入することで、金属部品同士の摩擦を軽減し、機械の性能を維持するメンテナンス作業です。グリスは液体の潤滑油よりも粘度が高く、半固体または半流動性を持つため、部品への付着力が強いという特徴があります。
農業機械に限らず、すべての機械はグリスやオイルによって適切に潤滑・防錆した状態での使用を想定した性能・耐久性の設計になっています。グリスアップを怠ると、部品の摩耗が進み、最悪の場合は機械の故障や破損につながる可能性があります。
📊 グリスアップの主な効果
効果 | 詳細 |
---|---|
摩擦軽減 | 金属部品同士の直接接触を防ぎ、スムーズな動作を実現 |
防錆効果 | 水分や湿気から金属を保護し、サビの発生を防止 |
密封性向上 | 軸受けや摺動部の密封性を高め、異物の侵入を防ぐ |
冷却効果 | 摩擦熱を吸収し、部品の過熱を防止 |
寿命延長 | 適切な潤滑により、機械全体の耐久性が向上 |
グリスアップは一見地味な作業に見えますが、トラクターの性能維持と故障予防において最も重要なメンテナンスの一つです。定期的なグリスアップにより、高額な修理費用を避け、機械を長期間安全に使用することができます。
特に農業機械は屋外での使用が多く、雨や土埃などの厳しい環境にさらされるため、一般的な機械よりもグリスアップの重要性が高くなります。代かき作業の後など、大量の水がかかった場合は、通常のスケジュールに関係なくグリスアップを行うことが推奨されています。
グリスアップの頻度は50時間または1年のどちらか早い時期
トラクターのグリスアップを行う適切な頻度は、使用時間50時間または1年のどちらか早い時期が基本となります。これは多くのメーカーの取扱説明書に記載されている標準的な目安です。ただし、使用環境や作業内容によって、この頻度を調整する必要があります。
📅 グリスアップの実施タイミング
実施タイミング | 詳細 |
---|---|
定期メンテナンス | 50時間使用ごと、または年1回 |
シーズン後 | 長期保管前の整備時 |
水がかかった後 | 代かき作業後など、大量の水にさらされた場合 |
作業前点検 | 新しい作業シーズン開始前 |
異常発見時 | 動作不良や異音を発見した場合 |
年間の使用時間が少ない農家の場合、年1回のグリスアップで十分な場合が多いですが、使用頻度が高い場合や過酷な条件下での作業が多い場合は、より頻繁なグリスアップが必要になります。
シーズン後の長期格納時にグリスアップを行うことは特に重要です。保管中の湿気やサビから機械を守り、次の使用時に良好な状態を保つことができます。また、代かき作業のように大量の水がかかる作業の後は、必ずグリスアップを実施することで、水分によるサビや腐食を防ぐことができます。
管理人の実践例として、多くの農家では年1回のペースでグリスアップを実施しており、これで十分な効果を得ているという報告があります。重要なのは頻度よりも確実性で、決めた時期にきちんと実施することが機械の長寿命化につながります。
ユニバーサルジョイントは最重要なグリスアップ箇所
トラクターのグリスアップにおいて、ユニバーサルジョイントは最も重要な箇所の一つです。ユニバーサルジョイントは、トラクター本体とロータリーなどの作業機を繋ぐ動力伝達部分で、黄色いカバーで保護されているのが一般的です。
🔧 ユニバーサルジョイントの重要性
ユニバーサルジョイントには、クロス状になった部分にニードルベアリング(細い棒状のベアリング)が詰まっており、これが正常に機能するためには適切なグリス供給が不可欠です。グリスが不足すると、ベアリングが錆び付いて無理に回転しようとし、最終的にジョイントが破損してしまいます。
📊 ユニバーサルジョイントの種類と特徴
ジョイントタイプ | 馬力 | クロス箇所数 | グリスニップル数 | 交換費用目安 |
---|---|---|---|---|
小型 | ~30馬力 | 2箇所 | 2個 | 約3万円 |
中型 | 30~50馬力 | 2箇所 | 2個 | 5~6万円 |
大型(広角) | 50馬力~ | 3箇所 | 4個 | 10万円以上 |
保管状況にもよりますが、5~6年程度メンテナンスをしていなければ破損する可能性があります。写真のようにクロスになっている部分から千切れてしまい、高額な修理費用が発生することになります。
グリスアップの際は、黄色い保護カバーの穴から覗くとグリスニップルが見えるので、そこにグリスポンプの先端を差し込んでグリスを注入します。グリスが正しく注入されているかは音で判断することが重要で、「ミチミチッ、ミチミチッ」という音が聞こえれば、ベアリングの隙間からグリスが漏れ出している証拠です。
面倒だからとグリスアップをしておかないと大損害になりますので注意しておいてくださいね。
引用元:https://www.agurimecha-redt.com/entry/2021/05/27/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%81%AE%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%A7%E8%B6%85%E9%87%8D%E8%A6%81%E3%81%AA%E7%AE%87%E6%89%80%E3%81%AF%E3%81%93%E3%81%93
実は黄色いカバー自体にもグリスニップルが付いており、ここにもしっかりとグリスを注入しないとカバーの破損につながります。カバーはLとRで分かれており、各1万円程度の高価な部品になっているため、こちらも忘れずに手入れをしておくことが重要です。
グリスの種類は4つあり用途に応じて使い分ける
トラクターのグリスアップに使用するグリスには、主に4つの種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。用途や使用環境に応じて適切なグリスを選択することで、より効果的なメンテナンスが可能になります。
🛢️ グリスの種類と特性比較表
グリス種類 | 耐水性 | 耐熱性 | 価格 | 主な用途 | 耐熱温度 |
---|---|---|---|---|---|
シャーシグリス | ○ | △ | 安い | 足回り、ベアリング | 80℃ |
リチウムグリス | ○ | ○ | 普通 | 万能(推奨) | 130℃ |
モリブデングリス | ○ | ◎ | 高い | 高荷重部分 | 150℃ |
ウレアグリス | ◎ | ○ | 少し高い | 特殊用途 | – |
**シャーシグリス(カルシウムグリス)**は最も安価で耐水性に優れますが、耐熱性に劣るため、荷重による摩擦が大きい部分には適しません。ホームセンターでカートリッジタイプが1本200円程度で購入できる経済的な選択肢です。
リチウムグリスは「万能グリス(マルチパーパスグリス)」とも呼ばれ、ほとんどの農業機械の取扱説明書に推奨されています。耐水性・耐熱性ともに優れており、農業機械に関しては基本的にすべての部分に使用可能です。シャーシグリスより50円ほど高いですが、汎用性の高さから最も推奨される選択肢です。
**モリブデングリス(極圧グリス)**は足周りで荷重がかかるボールジョイントや、焼き付きが発生しやすい場所に使用します。価格はシャーシグリスの約2倍ですが、使用箇所は限定的です。
ウレアグリスは金属を含まない有機性のグリスで、金属含有グリスが使用できない部分に使用します。田植機によく使用されますが、トラクターでの使用頻度は低い傾向があります。
初心者の方には、リチウムグリス一本で統一することをおすすめします。コストパフォーマンスと使いやすさのバランスが良く、トラクターのほぼすべての箇所に使用できるため、管理が簡単です。
グリスアップに必要な道具はグリスガンとグリス
トラクターのグリスアップを行うために必要な道具は、基本的にグリスガン(グリスポンプ)とグリスの2つだけです。特別な専門工具は必要なく、ホームセンターで手軽に購入できます。
🔨 必要な道具一覧
道具名 | 価格目安 | 用途 | 選び方のポイント |
---|---|---|---|
グリスガン | 2,000~7,000円 | グリス注入 | レバータイプが扱いやすい |
グリス | 200~500円/本 | 潤滑・防錆 | リチウムグリスが万能 |
ワークライト | 1,000~3,000円 | 作業照明 | 狭い場所での視認性向上 |
ウエス | 100~500円 | 清掃 | 汚れ拭き取り用 |
グリスガンには手動式とエアー式がありますが、一般的な農家では手動のレバータイプで十分です。レバーでグリスの吐出量を調整でき、狭い場所でも確実に作業ができます。価格は2,000円程度から購入可能で、グリースの充填が簡単に行えるタイプを選ぶのがおすすめです。
エアー式のグリスガンは作業効率が高く、グリスアップ箇所が多い場合や高所・狭所での作業に向いていますが、価格が6,000円程度と高く、エアーコンプレッサーも必要になります。初めてグリスアップを行う方には、手動のレバータイプが扱いやすくおすすめです。
🔧 グリスガンの付属品
グリスガンには通常、以下の付属品が含まれています:
- ホース: 注油しづらい場所に給油口がある場合に便利
- 曲げノズル: 角度が付いた箇所への注入に使用
- チャッキング付きニップル: グリスニップルとの接続部分
ワークライトがあると、黄色いカバーの内側にあるグリスニップルを確認しやすくなり、作業精度が向上します。特に屋内や夕方の作業では、明るい照明が作業効率を大幅に向上させます。
グリスの容量は400gのカートリッジタイプが一般的で、トラクター1台のグリスアップには十分な量です。手詰めタイプもありますが、カートリッジタイプの方が清潔で使いやすいため推奨されています。
ペダル支点のグリスアップは運転台真下で実施
ペダル支点のグリスアップは、トラクターの基本的なグリスアップ箇所の一つで、運転台の真下にあるブレーキ・クラッチペダルの軸部分に行います。この箇所は操作頻度が高く、適切な潤滑が安全な操作に直結する重要な部分です。
🎯 ペダル支点グリスアップの手順
ペダル支点には通常、3個のグリスニップルが並んで取り付けられています。これらはブレーキペダル(左右)とクラッチペダルのシャフト部分に対応しており、それぞれにグリスを注入する必要があります。
📊 ペダル支点の構成
ペダル名 | ニップル数 | 位置 | 注入量目安 |
---|---|---|---|
左ブレーキ | 1個 | 運転台左下 | 古いグリスが出るまで |
右ブレーキ | 1個 | 運転台右下 | 古いグリスが出るまで |
クラッチ | 1個 | 運転台中央下 | 古いグリスが出るまで |
グリスガンをグリスニップルに接続して注入すると、古いグリス(黒色)が新しいグリス(黄色)に押し出されてきます。これが適切な注入量の目安となります。グリスが切れている場合は、水が出てくることもあるため、しっかりと新しいグリスに置き換わるまで注入を続けることが重要です。
作業時の注意点として、ペダルの可動部分に衣服や工具が挟まれないよう注意し、エンジンを停止した状態で作業を行うことが安全上重要です。また、作業後はペダルの動作確認を行い、スムーズに動くことを確認してください。
グリスアップ後は、ペダルの遊び量も同時に点検することをおすすめします。適切な遊び量が確保されていないと、ブレーキやクラッチの効きに影響が出る可能性があります。基準値は機種によって異なりますが、一般的には35~45mm程度が目安とされています。
この箇所のグリスアップを怠ると、ペダルの動きが重くなったり、操作不良を起こしたりする可能性があります。操作系統は安全運転に直結するため、定期的な点検とグリスアップは必須と考えてください。
トラクターのグリスアップ実践方法と注意点
- センターピンとタイロッドのグリスアップ方法
- グリスが入らない時の対処法は針金で詰まりを除去
- グリスアップ後の確認ポイントと注意事項
- 定期メンテナンスでトラクターの寿命を延ばす効果
- 専門業者に依頼するタイミングと判断基準
- まとめ:トラクターグリスアップで機械を長持ちさせよう
センターピンとタイロッドのグリスアップ方法
センターピンとタイロッドは、トラクターの前輪操舵系統において重要な役割を果たす部品です。センターピンはエンジンルームの下、前輪の根元付近にあり、前輪と車体を支える支点となる箇所です。タイロッドは前輪の向きを調整する連結部分で、ハンドル操作の動力を前輪に伝える重要な部品です。
🔧 センターピンのグリスアップ手順
センターピンは前輪の旋回動作において常に荷重がかかる部分のため、適切なグリス供給が不可欠です。グリスが不足すると、ハンドル操作が重くなったり、異音が発生したりする可能性があります。
📊 操舵系統グリスアップ箇所
箇所名 | 位置 | ニップル数 | 交換頻度 | 重要度 |
---|---|---|---|---|
センターピン | エンジンルーム下部 | 1個 | 50時間/年1回 | ★★★ |
タイロッド | 前輪近く左右 | 2個 | 50時間/年1回 | ★★★ |
パワステシリンダ | 前輪上部 | 2個 | 50時間/年1回 | ★★☆ |
センターピンのグリスアップを行う際は、トラクターを水平な場所に停車し、エンジンを停止した状態で作業します。エンジンルームの下に潜り込む必要があるため、安全のために必ずエンジンを停止し、可能であれば車輪に輪止めをかけることをおすすめします。
タイロッドのグリスアップは比較的アクセスしやすい位置にありますが、前輪の角度によってニップルの向きが変わるため、作業しやすい角度に前輪を調整してから行います。グリス注入後は、ハンドルを左右に切って、グリスが全体に行き渡るように動作確認を行います。
これらの箇所には可動部分が多いため、グリス注入だけでなく、スプレーグリスによる全体的な潤滑も効果的です。特にロッドの可動部分やネジ部分には、定期的にスプレーグリスを吹き付けることで、長期間にわたって良好な動作を維持できます。
グリスが入らない時の対処法は針金で詰まりを除去
グリスアップ作業において、グリスがニップルから入らないというトラブルは珍しくありません。この場合、慌てずに適切な対処法を実施することで、問題を解決できます。グリスが入らない主な原因は、ニップル内部の詰まりや古いグリスの固化です。
🛠️ グリスが入らない時の対処手順
第1段階:グリスニップルの確認 まず、グリスニップルが正常に機能しているかを確認します。ニップル自体が破損していたり、内部にゴミが詰まっていたりする場合があります。
📋 トラブル診断チェックリスト
確認項目 | 対処法 | 必要な道具 |
---|---|---|
ニップルの外観 | 破損・変形がないか目視確認 | – |
ニップル内部 | 詰まりがないか確認 | 針金、細いドライバー |
グリスガン接続 | 正しく接続されているか確認 | – |
グリスの状態 | 古いグリスが固化していないか確認 | ウエス |
第2段階:ニップルの取り外しと清掃 グリスが入らない場合は、スパナなどでグリスニップルを外して確認します。ニップルをグリスガンの先に差し込み、ニップルが正常に動作するかテストします。ニップルが正常に機能すれば、問題は本体側にあると判断できます。
第3段階:詰まりの除去 針金や細いドライバーを使って、ニップル穴に溜まっている土や固まったグリスを除去します。この作業は慎重に行い、ニップル内部を傷つけないよう注意することが重要です。
グリスニップルを外していきます。グリスニップルをスパナなどで外し、ニップルが入っているかどうか確認するために、グリスガンの先に差し込みます。
引用元:https://note.com/ryutaro0306/n/na74cadd97709
清掃が完了したら、ニップルを元に戻し、再度グリス注入を試みます。多くの場合、この手順で問題は解決されます。それでもグリスが入らない場合は、ニップル自体の交換を検討する必要があります。
予防策として、グリスアップの際は毎回ニップル周辺を清掃し、汚れや異物の蓄積を防ぐことが重要です。また、長期間使用していないトラクターの場合は、作業前にニップルの動作確認を行うことをおすすめします。
グリスアップ後の確認ポイントと注意事項
グリスアップ作業が完了したら、適切な確認作業を行うことで、作業の効果を確認し、安全な運転を確保します。単にグリスを注入するだけでなく、その後の確認とメンテナンスが機械の長寿命化には欠かせません。
✅ グリスアップ後の確認手順
動作確認が最も重要な確認項目です。エンジンを始動し、低速でゆっくりと各部を動作させて、新しいグリスを全体になじませます。この際、異音や振動がないかを注意深く確認します。
📊 確認項目チェック表
確認項目 | 確認方法 | 正常な状態 | 異常時の対応 |
---|---|---|---|
動作音 | エンジン始動後に各部動作 | 静かでスムーズ | 異音があれば再点検 |
操作感 | ハンドル・ペダル操作 | 軽い操作感 | 重い場合はグリス不足 |
グリス漏れ | 各ニップル周辺を目視 | 適度なはみ出し | 過度な漏れは注入過多 |
可動部動作 | 全ての可動部を動作確認 | スムーズな動き | 引っかかりがあれば再調整 |
グリス注入量の適正確認も重要です。グリスは多すぎても少なすぎても問題となります。適正量は、古いグリスが新しいグリスに押し出されて、ニップル周辺に適度にはみ出している状態です。
⚠️ 注意すべきポイント
グリスアップ後は、余分なグリスの拭き取りを忘れずに行ってください。特にブレーキ周辺に付着したグリスは、ブレーキ性能に悪影響を与える可能性があります。また、グリスが飛散して他の部品に付着することも避ける必要があります。
作業完了後は、使用した工具の清掃と点検を行います。グリスガンのノズル部分にグリスが固着していると、次回使用時に問題が発生する可能性があります。工具のメンテナンスも、継続的なグリスアップ作業には重要な要素です。
環境への配慮として、使用済みのグリスやウエスは適切に処分してください。グリスは環境汚染の原因となる可能性があるため、地面への垂れ流しや不適切な廃棄は避け、自治体の規則に従って処分することが重要です。
定期メンテナンスでトラクターの寿命を延ばす効果
定期的なグリスアップを含む総合的なメンテナンスは、トラクターの寿命を大幅に延ばし、長期的な経済性を向上させます。適切なメンテナンスにより、機械の性能維持と故障予防が実現され、農作業の効率性と安全性が確保されます。
💰 メンテナンスの経済効果
定期メンテナンスは一見コストがかかるように思えますが、実際には大幅なコスト削減効果があります。グリスアップを怠ったために発生する修理費用は、定期メンテナンス費用の数十倍になることも珍しくありません。
📊 メンテナンスコストと修理費用の比較
項目 | 定期メンテナンス | 故障時修理 | 差額 |
---|---|---|---|
ユニバーサルジョイント | グリス代300円 | 交換費用3~10万円 | 約300~1000倍 |
ペダル系統 | グリス代200円 | 調整・交換1~3万円 | 約50~150倍 |
ステアリング系統 | グリス代200円 | 修理費用2~5万円 | 約100~250倍 |
年間メンテナンス総額 | 5,000~10,000円 | 故障修理総額20~50万円 | 約20~50倍 |
機械の稼働率向上も大きなメリットです。定期メンテナンスを実施していれば、作業シーズン中の突発的な故障を大幅に減らすことができます。農作業は時期が限定されるため、機械の故障による作業遅延は収益に直接影響します。
🎯 寿命延長の具体的効果
適切なメンテナンスにより、トラクターの使用可能年数を1.5~2倍に延ばすことが可能とされています。新車価格が数百万円のトラクターにとって、これは非常に大きな経済効果となります。
メンテナンスの効果は即座に現れるものではありませんが、5年、10年という長期スパンで見ると確実に差が現れます。特にグリスアップのような基本的なメンテナンスは、機械全体の調子に大きく影響するため、継続的な実施が重要です。
また、メンテナンスが行き届いたトラクターはリセールバリューも高くなります。買い替え時の下取り価格に大きな差が生まれるため、売却を考慮している場合も定期メンテナンスの実施は有効です。
専門業者に依頼するタイミングと判断基準
グリスアップは基本的に自分で行えるメンテナンスですが、専門業者に依頼すべきタイミングも存在します。適切な判断により、安全性と効率性を両立させることが重要です。
🏭 専門業者依頼の判断基準
技術的な限界を感じた場合は、無理をせずに専門業者に相談することをおすすめします。特に分解を伴う作業や、高度な調整が必要な場合は、専門知識と特殊工具が必要になります。
📋 専門業者依頼のタイミング一覧
状況 | 判断基準 | 理由 | 緊急度 |
---|---|---|---|
異音の発生 | グリスアップ後も改善しない | 内部損傷の可能性 | 高 |
動作不良 | 基本メンテナンスで解決しない | 複合的な問題 | 高 |
部品破損 | ニップル破損・部品脱落 | 交換・調整が必要 | 中 |
定期点検 | 1年または50時間ごと | 総合診断が必要 | 低 |
購入時点検 | 中古機導入時 | 初期状態の把握 | 中 |
年1回の総合点検は、自分でできるメンテナンスと併せて実施することで、より確実な機械管理が可能になります。専門業者は、素人では気づきにくい微細な異常や、将来的な問題を早期発見できる経験と技術を持っています。
🔍 専門業者のメリット
専門業者に依頼する最大のメリットは、総合的な診断と予防的なメンテナンスです。グリスアップだけでなく、エンジン、油圧系統、電気系統などの包括的な点検により、機械全体の健康状態を把握できます。
また、メーカー指定の純正部品や専用工具を使用した、確実なメンテナンスを受けることができます。特に保証期間中や、高額な機械の場合は、専門業者による適切なメンテナンスが重要になります。
配線は1年または50時間ごとに定期点検を受けてください。
引用元:https://www.yanmar.com/jp/agri/afterservice_support/selfcheck/tractor/
費用対効果を考えると、基本的なグリスアップは自分で行い、年1回の総合点検を専門業者に依頼するのが理想的なバランスと言えるでしょう。この組み合わせにより、コストを抑えながら確実なメンテナンスを実現できます。
まとめ:トラクターグリスアップで機械を長持ちさせよう
最後に記事のポイントをまとめます。
- トラクターのグリスアップは金属部品の摩擦を防ぎ、機械の寿命を延ばす重要なメンテナンスである
- グリスアップの適切な頻度は50時間使用ごと、または年1回のどちらか早い時期である
- ユニバーサルジョイントは最も重要なグリスアップ箇所で、破損すると高額な修理費用が発生する
- グリスには4種類あり、リチウムグリスが万能で初心者にも扱いやすい
- 必要な道具はグリスガンとグリスのみで、ホームセンターで手軽に購入できる
- ペダル支点は運転台真下にあり、安全な操作のため定期的なグリスアップが必須である
- センターピンとタイロッドのグリスアップはハンドル操作の軽さに直結する
- グリスが入らない場合は針金で詰まりを除去し、ニップルの清掃を行う
- グリスアップ後は動作確認と余分なグリスの拭き取りを忘れずに実施する
- 定期メンテナンスにより修理費用を大幅に削減し、機械の寿命を1.5~2倍に延ばせる
- 技術的な限界を感じた場合や年1回の総合点検は専門業者に依頼すべきである
- 代かき作業後など水がかかった場合は通常スケジュール外でもグリスアップを実施する
- グリス注入時の音(ミチミチ音)で適切な注入量を判断できる
- 環境への配慮として使用済みグリスやウエスは適切に処分する必要がある
- 継続的なグリスアップにより機械の稼働率向上と安全性確保が実現できる
調査にあたり一部参考にさせて頂いたサイト
- https://m.youtube.com/watch?v=2UGa_GcQlGw
- https://www.youtube.com/watch?v=KtuIxS-rqFE
- https://www.agurimecha-redt.com/entry/2021/05/27/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%81%AE%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%A7%E8%B6%85%E9%87%8D%E8%A6%81%E3%81%AA%E7%AE%87%E6%89%80%E3%81%AF%E3%81%93%E3%81%93
- https://www.youtube.com/watch?v=iUuA1v_Sels&pp=0gcJCdgAo7VqN5tD
- https://kikaim.com/toraguri.html
- https://note.com/ryutaro0306/n/na74cadd97709
- https://www.agri-ya.jp/column/2023/04/28/tractor-greasing-methods-and-tips/
- https://www.monotaro.com/kc/usage/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%81%AE%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97%E3%81%AB%E4%BD%BF%E3%81%86%E5%95%86%E5%93%81/
- https://www.karasawanouki.co.jp/nouki_blog/y-f20210315/
- https://www.yanmar.com/jp/agri/afterservice_support/selfcheck/tractor/