代掻き作業は田植えの成功を左右する重要な工程ですが、トラクターの設定が適切でないと、土の状態が悪くなり田植え時に苗が刺さりにくくなったり、その後の稲の成長に悪影響を与えてしまいます。特に初心者の方は、エンジン回転数やPTO設定、深さ調整など、どのような設定にすれば良いのか迷ってしまうことが多いでしょう。
本記事では、代掻き作業におけるトラクターの最適な設定方法について、具体的な数値や手順を交えながら詳しく解説します。エンジン回転数の調整方法から、PTO設定、車速、深さ調整、各種機能のON・OFF設定まで、プロの農家が実践している設定ノウハウを余すことなくお伝えします。また、作業効率を向上させる旋回方法や、ハロー・ロータリーの使い分け、水量調整のコツなど、代掻き作業を成功させるための実践的なテクニックも併せて紹介します。
この記事のポイント |
---|
✅ 代掻きに最適なエンジン回転数とPTO設定の具体的数値 |
✅ 車速と深さ調整の正しい設定方法と注意点 |
✅ 4WDや倍速ターンなど各種機能の使い分けテクニック |
✅ 効率的な回り方と旋回方法による枕地対策 |
代掻きトラクター設定の基本とベストな調整方法
- 代掻きトラクター設定の最重要ポイントはエンジン回転数2000-2400rpm
- PTOギアは1速固定が代掻き作業の鉄則
- 車速設定は時速2-4kmが代掻きの最適スピード
- 深さ調整は10cmが代掻き作業の標準設定
- 4WD機能と倍速ターンの使い分けが作業効率を左右する
- ハローとロータリーの選択で代掻き品質が決まる
代掻きトラクター設定の最重要ポイントはエンジン回転数2000-2400rpm
代掻き作業において最も重要な設定の一つがエンジン回転数です。適切な回転数設定により、土の砕き具合や作業効率が大きく変わってきます。
🔧 エンジン回転数の標準設定値
作業内容 | 推奨回転数 | 備考 |
---|---|---|
荒代掻き | 2000-2200rpm | 土を粗く砕く作業 |
植代掻き | 2200-2400rpm | 仕上げの細かい調整 |
均平作業 | 2400rpm | 表面を平らにする作業 |
エンジン回転数が低すぎると、土を十分に砕くことができず、代掻き後の土の状態が悪くなります。一方で、回転数が高すぎると燃料消費が増加し、また土が細かくなりすぎて田植え時に苗が安定しない原因となってしまいます。
実際の設定方法として、まずアクセルレバーで回転数を固定します。多くのトラクターには亀とウサギのイラストが描かれたダイヤルがあり、これを適切な位置に設定することで一定の回転数を維持できます。作業中は常にタコメーターを確認し、設定した回転数を維持しているかチェックしましょう。
エンジン回転数2400rpmで運転した場合、一般的にPTO回転数は540rpm程度、爪軸回転数は200-300rpm程度になります。この数値は機種によって多少異なりますが、代掻き作業における標準的な設定として覚えておくと良いでしょう。
回転数の微調整は、その日の土の状態や水の量、前回の耕起からの経過時間などを考慮して行います。土が固い場合は若干回転数を上げ、柔らかい場合は下げるなど、現場の状況に応じて臨機応変に対応することが重要です。
PTOギアは1速固定が代掻き作業の鉄則
代掻き作業におけるPTO(Power Take Off)ギアの設定は、作業の品質と安全性に直結する重要な要素です。基本的には1速固定が推奨されており、これには明確な理由があります。
⚙️ PTOギア設定の基本ルール
ギア段数 | 用途 | 回転数 | 推奨度 |
---|---|---|---|
1速 | 代掻き作業 | 540rpm | ★★★★★ |
2速 | 特殊な条件下 | 約1000rpm | ★★☆☆☆ |
3速以上 | 代掻きには不適 | – | ☆☆☆☆☆ |
PTOギアを1速に設定する際は、必ずクラッチを踏みながら操作しましょう。これは変速時の衝撃を和らげ、機械への負担を軽減するためです。また、PTOスイッチがある機種では「自動入り」に設定することで、作業機を上げた際に自動的に回転が止まり、安全性が向上します。
1速設定が推奨される理由として、まず適度な砕土効果が挙げられます。回転数が適切であることで、土を細かくしすぎることなく、田植えに最適な土の状態を作り出すことができます。また、石などの障害物に対する安全性も重要な要素です。高速回転では石に当たった時にチェーンが切れたり、ケースが割れる可能性が高くなりますが、1速であればこのようなリスクを大幅に軽減できます。
ただし、条件によっては2速を使用することもあります。例えば、非常に軟らかい土質で1速では攪拌が不十分な場合や、時間的制約がある場合などです。しかし、これらは特殊なケースであり、基本的には1速での作業を心がけましょう。
PTO1速での代掻き作業では、エンジン回転数2400rpmでPTO回転数が540rpm程度になります。これは多くの作業機メーカーが推奨する標準的な回転数であり、機械の性能を最大限に引き出すことができる設定です。
作業開始前には必ずPTOオイルの量と状態をチェックし、適切なメンテナンスを行っておくことも重要です。PTOギアの設定は作業の基本中の基本ですが、その重要性を理解して適切に設定することで、効率的で安全な代掻き作業が可能になります。
車速設定は時速2-4kmが代掻きの最適スピード
代掻き作業における車速設定は、土の砕き具合と作業効率のバランスを取る上で非常に重要です。適切な速度設定により、理想的な代掻き効果を得ることができます。
🚜 車速設定の詳細ガイド
作業段階 | 推奨車速 | 土の状態 | 注意点 |
---|---|---|---|
荒代掻き | 2-3km/h | 粗い砕土でOK | 深くしっかりと |
植代掻き | 3-4km/h | 細かく均一に | 表面を丁寧に |
均平作業 | 2-2.5km/h | 非常に細かく | 慎重に操作 |
車速が速すぎる場合の問題点として、まず土が十分に砕けないことが挙げられます。トラクターが速く進みすぎると、ロータリーやハローの爪が土に十分に作用する時間がなく、大きな土塊が残ってしまいます。これにより田植え時に苗が刺さりにくくなったり、根の張りが悪くなる原因となります。
一方で、車速が遅すぎる場合も問題があります。土が細かくなりすぎることで、土壌が泥状になってしまい、田植え後の苗の安定性が損なわれます。また、作業時間が長くなることで燃料消費量も増加し、経済的な負担も大きくなってしまいます。
実際の速度設定は、その日の土の状態を見ながら調整することが重要です。土が硬い場合は若干速度を落とし、柔らかい場合は標準速度で作業を行います。また、水の量によっても最適な速度は変わってくるため、常に土の状態を観察しながら微調整を行いましょう。
エンジン回転数を上げた状態で車速を2-4km/hに設定するには、適切な変速操作が必要です。多くのトラクターでは主変速と副変速の組み合わせで速度を調整しますが、機種によって操作方法が異なるため、取扱説明書を確認しながら最適な設定を見つけることが大切です。
作業中は速度計を確認しながら一定の速度を維持し、カーブや障害物がある場所では適宜速度を調整しましょう。特に枕地(田んぼの端)での作業では、安全性を考慮して速度を落とすことも重要です。
深さ調整は10cmが代掻き作業の標準設定
代掻き作業における深さ調整は、土の攪拌効果と作業効率を決定する重要な要素です。適切な深さ設定により、理想的な土の状態を作り出すことができます。
📏 深さ調整の基準値
作業種類 | 設定深さ | 目的 | 確認方法 |
---|---|---|---|
荒代掻き | 8-12cm | 土塊を粗く砕く | チェーンケースが当たる程度 |
植代掻き | 6-10cm | 表面を均一に | タイヤ跡が残らない程度 |
均平作業 | 5-8cm | 微細な調整 | 水面下で軽く攪拌 |
深さ調整の基本として、10cmを標準として覚えておきましょう。この深さは、土を適度に攪拌しながらも、下層の硬い土を攪拌しすぎないちょうど良いバランスを保つことができます。深すぎると不要な硬い土が混入し、浅すぎると十分な攪拌効果が得られません。
深さの確認方法として、深さゲージがある機種では常時確認しながら調整を行います。深さゲージがない場合は、水の量の加減も考慮しながら、ハロー前側の黒い整流フラップが土(水面)より少し上の位置になるように調整します。これが深さ10cmの目安となります。
深さ調整は油圧レバーまたは深さ調整ダイヤルで行います。自動耕深機能が付いていないトラクターの場合、車体が沈んだら沈んだ分だけ作業機を上げる必要があります。これは、一定の深さを維持するために重要な操作です。
🔄 深さ調整の実践的なポイント
- 土の硬さに応じた調整: 硬い土では深めに、柔らかい土では浅めに設定
- 水量との関係: 水が多い場合は若干浅めに調整
- 前作業からの経過時間: 時間が経った土は深めの調整が必要
- 機械の沈み込み: 作業中の車体沈み込みを考慮した調整
深さ調整時の注意点として、急激な変更は避け、徐々に調整することが重要です。また、圃場の条件が一定でない場合は、場所に応じて細かく調整を行う必要があります。特に、高低差がある圃場では、低い部分で深くなりすぎないよう注意が必要です。
4WD機能と倍速ターンの使い分けが作業効率を左右する
代掻き作業におけるトラクター機能のON・OFF設定は、作業効率と仕上がりの品質に大きな影響を与えます。特に4WD機能と倍速ターンの使い分けは、経験豊富な農家と初心者の差が現れやすい部分です。
🛠️ 主要機能の設定ガイド
機能名 | 設定 | 効果 | 使用場面 |
---|---|---|---|
4WD機能 | ON | 四輪駆動で安定走行 | 湿った圃場、傾斜地 |
倍速ターン | 条件による | 小回りが利く | 効率重視の作業 |
旋回アップ | ON | 自動で作業機上昇 | 安全性向上 |
バックアップ | ON | 後進時自動上昇 | 事故防止 |
4WD機能は四輪駆動により安定した走行を可能にします。特に代掻き作業では圃場が湿っているため、後輪だけの駆動では滑りやすく、作業効率が悪くなる場合があります。4WD機能をONにすることで、しっかりとしたトラクションを確保し、安定した代掻き作業が可能になります。
倍速ターン機能については、使い分けが重要です。この機能は、ハンドルを一定以上切ると前輪が通常より多く回転し、小回りが利くようになります。効率を重視する場合は有効ですが、枕地を荒らしてしまう恐れがあるため注意が必要です。
⚠️ 倍速ターン使用時の注意点
- 枕地(田んぼの端)での使用は控えめに
- 土が軟らかい場合は特に注意
- 一回で回り切れない場合は切り返しを行う
- 圃場の条件を見極めて使用する
4WD機能を使用する場合、一度で回り切れないため切り返しが必要になることがあります。これは4WDの特性上仕方のないことですが、事前に回転半径を把握しておくことで、効率的な作業パターンを組むことができます。
旋回アップ機能は、ハンドルを一定以上切ると作業機を自動で上げてくれる機能です。これにより旋回時の作業機の損傷を防ぐことができ、また不必要な土の攪拌を避けることもできます。基本的にはONに設定しておくことを推奨します。
バックアップ機能は、シャトルレバーをバックギアに入れると自動で作業機を上げてくれる機能です。バック時の事故を防ぐ重要な安全機能であり、必ずONに設定しておきましょう。
これらの機能の適切な使い分けにより、作業効率の向上と高品質な代掻き仕上がりの両立が可能になります。圃場の条件や作業の目的に応じて、最適な設定を選択することが重要です。
ハローとロータリーの選択で代掻き品質が決まる
代掻き作業における作業機の選択は、仕上がりの品質と作業効率に大きな影響を与えます。主にハローとロータリーの2つの選択肢がありますが、それぞれに特徴と適用場面があります。
🔧 ハローとロータリーの比較表
項目 | ハロー | ロータリー |
---|---|---|
専用性 | 代掻き専用 | 汎用性あり |
仕上がり品質 | 非常に良い | 良い |
土の押さえ込み効果 | 優秀 | 普通 |
購入コスト | 高い | 標準装備 |
保管スペース | 必要 | 不要 |
作業効率 | 高い | 標準 |
ハローは代掻き専用の作業機として設計されており、土を下に抑え込む機能とレーキの役割を兼ね備えています。特に仕上げの代掻きにおいては、土面をきれいに均すことができ、田植え時の苗の植え付けが均一になり、苗の活着も良くなります。
ハローの最大の特徴は、土を下に抑え込む機能です。これにより、表面に浮いている藁などの有機物を土中に埋め込むことができ、また土の表面を平らに仕上げることができます。このため、代掻き後の田んぼの状態が非常に良くなり、その後の田植え作業がスムーズに進みます。
一方で、ハローは高価であり、取り付けも大変というデメリットがあります。また、代掻き以外の用途がないため、年間を通した費用対効果を考慮する必要があります。
ロータリーは、ハローがない場合の代用として使用されます。トラクターに標準でついているため、追加の購入費用がかからず、保管スペースも不要です。土を混ぜることはできますが、ハローほどきれいには仕上がりません。
📋 作業機選択の判断基準
- 圃場の規模: 大規模経営ではハローが有利
- 仕上がり品質の要求度: 高品質を求める場合はハロー
- 経済性: 初期投資を抑えたい場合はロータリー
- 作業頻度: 代掻き頻度が多い場合はハロー導入を検討
ロータリーで代掻きを行う場合のコツとして、ロータリーカバーの固定が重要です。土を移動させる目的がある場合は、カバーが動かないように固定位置を調整することで、より効果的な代掻きが可能になります。
どちらの作業機を選択するにしても、定期的なメンテナンスは欠かせません。爪の摩耗状態や各部の潤滑、ボルトの緩みなどを定期的にチェックし、最適な状態を維持することが重要です。
また、土の状態や水の量に応じて作業機の設定を調整することも大切です。特に深さ調整や速度設定は、使用する作業機の特性を理解した上で行う必要があります。
代掻きトラクター設定における効率化テクニックと注意点
- 代掻き作業の回り方は外周→真ん中の順序がセオリー
- 水の量調整は土が8割見える程度がベスト設定
- 旋回方法の使い分けで枕地を最小限に抑える技術
- ロータリーカバー固定が均平作業成功の秘訣
- 代掻き回数と時期設定で田植え成功率が向上する
- トラクター機能のON・OFF設定で安全性と効率性を両立
- まとめ:代掻きトラクター設定で押さえるべき重要ポイント
代掻き作業の回り方は外周→真ん中の順序がセオリー
代掻き作業における回り方は、作業効率と仕上がりの品質を左右する重要な要素です。基本的なセオリーとして「外周→真ん中」の順序で作業を進めることが推奨されています。
🗺️ 代掻き作業の標準的な順序
順序 | 作業内容 | 回数 | 注意点 |
---|---|---|---|
1 | 外周1回目 | 1周 | 畔際まで丁寧に |
2 | 真ん中1回目 | 往復 | 5cm間隔で目印 |
3 | 真ん中2回目 | 往復 | 1回目の道順を戻る |
4 | 外周2回目 | 1周 | 反対回りで |
5 | 外周2周目 | 1周 | 仕上げの調整 |
外周1回目では、圃場に入って正面に進み、四隅すべてを丁寧に回ります。畔や壁等にぶつけないよう注意し、万が一ぶつけそうになったら無理をせずバックして立て直しましょう。角では、前輪が畔際に来るまで代掻きを行い、その後少しバックして方向転換します。
この時、ハローが大きく振り出すため、壁等に気をつける必要があります。畔際までバックしてから代掻きを再開し、四隅すべてを完了させて乗り入れ口まで戻ります。乗り入れ口の隅も忘れずに行いましょう。
真ん中の作業では、乗り入れ口からスタートして端まで代掻きします。端に来たらターンを行いますが、この時のコツとして列の間を5cmほど空けておくと、2回目を行う際の目印になって作業がやりやすくなります。これは特に大きい圃場や水が多い時に非常に有効な方法です。
🎯 効率的な回り方のポイント
- 同じ場所を何度も通れる: 田植えと違い代掻きは重複作業が可能
- 土の飛ぶ方向を考慮: 正回転では後ろに土が飛ぶ
- 枕地の発生を最小限に: コース取りで土の盛り上がりを制御
- 延長レベラの活用: 2回目は展開して仕上がりを向上
真ん中2回目では、1回目の道順を戻るように代掻きします。延長レベラがある場合は展開しておくとキレイに仕上がります。最終的に乗り入れ口に戻るように計画的に作業を進めましょう。
外周2回目は、1回目の反対回りで代掻きします。この時、畔際側の延長レベラを閉じて行い、圃場から出る際にやりきれない箇所も併せて処理します。基本的なやり方は1回目と同じですが、反対回りにすることで1回目で処理しきれなかった部分をカバーできます。
最後の外周2周目では、先ほど閉じた延長レベラを再び展開し、外周1周目の内側を代掻きしてターン時についたタイヤ痕を消していきます。この2周目は必須ではありませんが、やっておくと仕上がりが格段に良くなります。
水の量調整は土が8割見える程度がベスト設定
代掻き作業における水の量調整は、作業効率と仕上がりの品質を決定する重要な要素です。適切な水量設定により、理想的な代掻き効果を得ることができます。
💧 水量設定の詳細ガイド
水位状態 | 土の見え方 | 適用場面 | メリット |
---|---|---|---|
最適水位 | 土8割・水2割 | 標準的な代掻き | バランスが良い |
やや浅水 | 土9割・水1割 | 精密な均平作業 | 高低差が見やすい |
やや深水 | 土6割・水4割 | 軟らかい土質 | 作業機の負荷軽減 |
土が8割ほど水面から出る程度が理想的な水量です。この設定には明確な理由があります。まず、表面が確認しやすく代掻きを均一にできることが挙げられます。土の高低差や代掻きの進行状況が目視で確認できるため、作業の精度が向上します。
また、肥料や除草剤が田の外に流出しにくいというメリットもあります。水が多すぎると、せっかく投入した肥料や除草剤が隣の田や用水路に流れ出してしまい、効果が半減してしまいます。適切な水量により、これらの資材を田内に留めることができます。
さらに、ワラなどの水に浮きやすいものでも土中に沈めることができます。水が多すぎるとワラが浮いてしまい、代掻き作業の障害となりますが、適切な水量であればしっかりと土中に埋め込むことができます。
🌊 水量調整の実践的なポイント
- 用水路との接続: 水門の有無で調整時間が変わる
- 隣接田との関係: 水が流れ込む・流れ出る影響を考慮
- 肥料・除草剤: 流出防止のための水位管理
- 作業時間: 水量調整にかかる時間も計算に入れる
水量調整が必要な場合は、所要時間に注意する必要があります。田が用水路に接していて水門がある場合は、入水門や排水門を開けるだけで済みますが、水利組合への確認が必要です。一方、水門がない場合は、隣の田との調整と相談が必要で、水を入れるのも抜くのも時間がかかります。
特に用水路に接していない場合は注意が必要です。水だけでなく肥料や除草剤も隣の田に流れていくため、近隣農家との関係を悪化させないよう慎重な管理が求められます。
水量が不足している場合の対処法として、事前の計画が重要です。代掻き作業の前日までに適切な水量を確保しておくことで、当日の作業がスムーズに進みます。また、天候の変化も考慮し、雨天時の排水対策も併せて検討しておきましょう。
水が多すぎる場合は、排水を行う必要がありますが、この際も肥料や除草剤の流出に注意が必要です。できるだけ澄んだ上水を排水し、濁った下水は田内に留めるよう工夫しましょう。
旋回方法の使い分けで枕地を最小限に抑える技術
代掻き作業における旋回方法の選択は、作業効率と枕地の発生を左右する重要な技術です。様々な旋回方法を適切に使い分けることで、効率的かつ高品質な代掻き作業が可能になります。
🔄 主要な旋回方法の比較
旋回方法 | 特徴 | 適用場面 | 枕地への影響 |
---|---|---|---|
バックターン | 最も基本的 | 一般的な圃場 | 最小限 |
斜め旋回 | 壁際まで攻められる | 障害物がある場合 | 少ない |
倍速ターン | 最も簡単・高速 | 効率重視 | 多い |
一畝飛ばし耕 | 緩やかな旋回 | 軟らかい圃場 | 最小限 |
バックターンは最もオーソドックスな旋回方法です。圃場の端まで来たらバックし、90°旋回してから作業機を降ろし、90°旋回して隣接耕で続きを代掻きします。枕地にやさしい旋回方法であり、機械の条件によりますが代掻き外周を1周で仕上げることができます。
斜め旋回は、代掻きしながら45°斜めに進む方法です。端まで来たら90°バック旋回し、作業機を降ろして45°旋回で隣接作業を続けます。壁等がある際にトラクターのウェイトが当たらず、ギリギリまで攻めることができるメリットがあります。ただし、90°バック旋回する際にハローをぶつけないよう注意が必要です。
⚡ 効率重視の旋回テクニック
倍速ターンは一番簡単な方法で、オートアップと倍速ターンを入れて一気に180°旋回します。最も簡単で速い反面、緩い枕地だと深くなってしまう問題があります。はまりやすい場所では使わない方が良いでしょう。
一畝飛ばし耕は、2WDまたは4WDで180°緩やかに旋回し、ハロー1列分あけて続きを代掻きする方法です。大体ハローの長さの8割分、幅を開けると良いとされています。これも枕地にやさしい旋回方法の一つです。
🎛️ 旋回時の速度調整テクニック
旋回時に速度を落とす方法として、アクセルレバーで通常より回転数を下げる技術があります。エンジン回転上限を普段代掻きする回転数に設定し、アクセルペダルをベタ踏みで代掻きし、旋回時だけアクセルを離すことで、ゆっくり回ることができます。
これによりより枕地にやさしく旋回できるようになります。最近のトラクターでは「e旋回機能」でこの操作を自動化できる機種もあります。
旋回方法の選択は、その日の圃場条件、土の軟らかさ、作業時間の制約などを総合的に判断して決定します。複数の方法を組み合わせて使用することで、最も効率的で品質の高い代掻き作業が可能になります。
ロータリーカバー固定が均平作業成功の秘訣
ロータリーカバーの固定は、均平作業の品質を決定する重要な技術の一つです。適切なカバー設定により、土の移動と均平効果を最大化することができます。
🔧 ロータリーカバー設定の詳細
設定位置 | バネの効き | 適用作業 | 効果 |
---|---|---|---|
上段(固定) | 効かない | 均平作業 | 土をつかむ |
中段(標準) | 普通 | 一般的な代掻き | バランス良好 |
下段(フリー) | 強い | 耕起作業 | ふっくら仕上げ |
ロータリーカバーには目的に応じてバネの効く程度を変える機能があります。多くのロータリーは三段階に調節でき、耕起の時は土を押さえずにふっくらと起こしたいので、固定位置を真ん中にします。普段の代掻きも同様の位置に設定することが一般的です。
しかし、土を移動させる目的がある場合は、カバーが動かないようにもう一つ下の位置に固定します。固定ピンを一段下げることで、カバーを持ち上げることになり、バネが効かない状態にできます。
この設定により、ロータリーを下した時にグッと土をつかむことができるようになります。これは均平作業において非常に重要な機能で、高い部分の土を低い部分に移動させる際に威力を発揮します。
📋 カバー固定作業の実践ポイント
- 浅水での作業: 土の高低差が見やすい条件で実施
- 適度な砕土: 土が大きすぎても小さすぎても効果が出ない
- 移動距離の計算: 高い場所から低い場所への効率的な移動
- 削りすぎの防止: ロータリー通過後の水の流れ込みで判断
ロータリーカバーを固定し、土が適度な大きさになったら、土の高いところまで移動し、低いところまで引っ張ります。移動の際には、ロータリーを下ろしてタイヤ跡を残さない程度まで下げます。
オートロータリー(深耕の自動制御)を切り、ポジションコントロール(手動制御)に変えることも重要です。高い位置まできたらロータリーを下ろし、土をつかんで移動しますが、削りすぎないよう注意が必要です。
⚠️ 作業時の注意事項
水の張り具合にもよりますが、浅水で作業を行う場合、ロータリー通過後に一気に水が流れ込むのは削りすぎのサインです。適度な削り具合を維持することで、効果的な土の移動と均平が可能になります。
この技術をマスターすることで、従来の代掻き作業の倍以上の時間をかけても、それに見合うメリットを得ることができます。田んぼが平らであることは、それだけで草の抑制になり、除草剤の使用有無に関わらず稲作りの基本として最重要技術と言えるでしょう。
代掻き回数と時期設定で田植え成功率が向上する
代掻きの回数と時期設定は、田植えの成功率と稲の生育に直接影響を与える重要な要素です。適切な計画により、最高の田植え条件を整えることができます。
📅 代掻き実施スケジュール
田の状態 | 実施回数 | 1回目の時期 | 2回目の時期 | 3回目の時期 |
---|---|---|---|---|
良好な田 | 1回 | 田植え2-7日前 | – | – |
荒れている田 | 2回 | 田植え3-7日前 | 田植え2-3日前 | – |
耕作放棄地 | 3回 | 田植え5-7日前 | 田植え3-4日前 | 田植え1-2日前 |
代掻きは田植えの2~7日前に行う重要な作業です。この期間設定には明確な理由があります。早すぎると雑草が生え、土が締まってしまいます。遅すぎると土が十分に落ち着かず、田植え時に苗が安定しません。
**1回目の代掻き(荒代掻き)**は、田植えの3日前から1週間前に実施します。この段階では土を粗く砕き、有機物を埋め込むことが主な目的です。深めに設定し、しっかりと土を攪拌します。
**2回目の代掻き(植代掻き)**は、田植えの2~3日前に実施します。1回目よりも浅めに設定し、表面を均一に仕上げることが目的です。この段階で田植えに最適な土の状態を作り上げます。
🎯 回数別の作業目的と効果
- 1回代掻き: 時間効率重視、標準的な仕上がり
- 2回代掻き: 品質重視、雑草抑制効果も期待
- 3回代掻き: 最高品質、困難な条件での対応
代掻きの効果として、土壌が均一になり、水や肥料の浸透がよくなり、作物の収穫量が向上することが期待できます。また、代掻きによって病気や害虫の発生を防ぐことができ、作物の品質を保つことができます。
代掻き間隔の設定も重要です。1回目と2回目の間隔は3~5日程度が理想的です。この間隔により、1回目で浮いた雑草や有機物が沈殿し、2回目でそれらを完全に埋め込むことができます。
⏰ 時期設定の判断基準
- 天候予報: 雨の予報がある場合は前倒し
- 田植えスケジュール: 複数圃場の効率的な順序
- 土の状態: 乾燥度合いや前作の残渣量
- 労力配分: 他の農作業との調整
時期設定で注意すべき点として、代掻きの効果の一つに雑草が生えにくいというメリットがありますが、あまりに早く代掻きを終えると、苗を植えるまでに雑草が生え伸びてしまう可能性があります。また、せっかく柔らかく綺麗に整えた土が、固く締まってしまうこともあるでしょう。
代掻き完了から田植えまでの期間は、土を落ち着かせる重要な時間です。均平精度が高いと、田植えを行ったあとも苗立ちが均平になり、成長のムラも無く、高品質につながります。この期間設定こそが、代掻き技術の真骨頂と言えるでしょう。
トラクター機能のON・OFF設定で安全性と効率性を両立
代掻き作業における安全性と効率性の両立は、適切な機能設定により実現できます。各種機能の特性を理解し、状況に応じた使い分けを行うことが重要です。
🛡️ 安全性重視の機能設定
機能名 | 設定 | 安全効果 | 注意点 |
---|---|---|---|
旋回アップ | ON | 旋回時の作業機損傷防止 | 自動上昇のタイミング確認 |
バックアップ | ON | 後進時の事故防止 | 必須の安全機能 |
緊急停止 | 常時確認 | 万一の際の即座停止 | レバー位置の把握 |
安全フレーム | 点検済み | 転倒時の保護 | 定期点検が必要 |
旋回アップ機能は、ハンドルを一定以上切ると作業機を自動で上げてくれる機能です。これにより旋回時の作業機の損傷を防ぐことができ、また不必要な土の攪拌を避けることもできます。基本的にはONに設定しておくことを推奨しますが、自動上昇のタイミングを事前に確認しておくことが重要です。
バックアップ機能は、シャトルレバーをバックギアに入れると自動で作業機を上げてくれる機能です。バック時の事故を防ぐ重要な安全機能であり、必ずONに設定しておきましょう。この機能により、後進時に作業機が地面に引っかかることや、観察者への衝突事故を防ぐことができます。
⚡ 効率性向上の機能設定
作業効率を向上させるための機能設定として、4WD機能の適切な使用が挙げられます。四輪駆動により安定した走行が可能になり、特に湿った圃場や傾斜地での作業効率が大幅に向上します。
倍速ターン機能は、効率重視の場合に有効ですが、枕地を荒らしてしまう恐れがあるため、使用場面を選ぶ必要があります。効率を優先するか、仕上がり品質を優先するかの判断が重要です。
🔄 状況に応じた機能の使い分け
- 圃場の状態: 軟らかい場合は慎重な設定
- 作業時間の制約: 急ぐ場合は効率重視
- 仕上がり要求度: 高品質が必要な場合は安全重視
- 経験レベル: 初心者は安全機能を最大限活用
機能のON・OFF設定は、作業開始前に必ず確認しましょう。特に複数のオペレーターが同じトラクターを使用する場合は、設定の統一と情報共有が重要です。
また、e旋回機能などの新しい技術も積極的に活用しましょう。旋回時の速度を自動調整することで、枕地にやさしく、かつ効率的な旋回が可能になります。
安全性と効率性のバランスを取るためには、経験に基づく判断が重要です。初心者の場合は安全性を最優先に設定し、経験を積むにつれて効率性も考慮した設定に移行していくことが推奨されます。
定期的な機能の点検とメンテナンスも欠かせません。安全機能が正常に作動しない場合は、重大な事故につながる可能性があるため、作業前の点検を怠らないようにしましょう。
まとめ:代掻きトラクター設定で押さえるべき重要ポイント
最後に記事のポイントをまとめます。
- エンジン回転数は2000-2400rpmが基本設定である
- PTOギアは1速固定で安全性と品質を確保する
- 車速は時速2-4kmで土の砕き具合を調整する
- 深さ調整は10cmを標準として土の状態に応じて微調整する
- 4WD機能は湿った圃場で安定走行を実現する
- 倍速ターンは効率重視だが枕地への影響を考慮する
- ハローは専用機として高品質仕上げを可能にする
- ロータリーは汎用性があり経済的な選択肢である
- 外周→真ん中の作業順序が効率的な基本パターンである
- 水量は土が8割見える程度が最適な設定である
- 旋回方法の使い分けで枕地発生を最小限に抑える
- ロータリーカバー固定で土の移動と均平を効率化する
- 代掻き回数と時期設定で田植え成功率を向上させる
- 安全機能のON設定で事故防止を最優先する
- 効率性機能は圃場条件を見極めて使用する
- 定期的なメンテナンスで機械の最適状態を維持する
- 取扱説明書の確認で機種別の最適設定を把握する
- 経験に基づく判断で現場に応じた微調整を行う
- 近隣農家との連携で地域に適した方法を学ぶ
- 継続的な技術向上で代掻き品質の向上を図る
調査にあたり一部参考にさせて頂いたサイト
- https://greenland-yoro.jp/shirokaki/
- https://greenland-yoro.jp/sirokaki-turn/
- https://www.kubota.co.jp/kubotatanbo/rice/planting/ploughing_02.html
- https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11224201716
- https://no-chi.com/rice-puddling-shirokaki/
- https://www.agri-ya.jp/column/2024/01/18/introducing-the-steps-and-tips-for-plowing-rice-fields/
- https://www.youtube.com/watch?v=SNwoRupbuZA
- https://komeya4th.exblog.jp/28348694/